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2006年×月 某上場企業株主総会参加レポート

 現在、わたしはSEモドキをやっておりますが、以前は事務屋でして、年に一度は総会の雑用に右往左往しておりました。その経験からかねがね「よその会社は株主総会ってどんな風にやっているんだろ?」と思っていましたところ、たまたま機会がありましたので、後学のため、と参加してまいりました。

 個人投資が盛んになってきた昨今、ちょっと株式取引に手を出してみたらいつのまにか総会の招集通知が舞い込んできて「おやおや」と思った経験をお持ちの方もいらっしゃるのでは? それで「株主総会ってどんなものなのか、知りたいから一度くらいは出てみたいけど、今までそんなのには縁が無かったからなんだかちょっと出にくいな・・・」などとお考えの方、ご参考の足しにしていただければ幸いです。

 2006年×月△日午前9時45分、電車を降りたわたしは上場企業A社(製造業)の株主総会に出席するべく、JRの駅を出て東京都内某所の、とあるホテルに向かいました。

 この駅はA社本社の最寄り駅でもあります。旧商法の規定で、株主総会の開催場所は原則その会社の本店(本社)の所在する市区町村か隣接する市区町村となっていたためでしょう。ただ、旧商法を改正・再編して新たに制定された会社法では開催場所は原則自由となったので、今後は変更されるかもしれません。

株主総会の入場票
[株主総会の入場票・一部修正]

 午前9時50分、招集通知に添付の案内図に従い、迷うこともなく開催場所のホテルに到着。入口のそばに案内の人が立っていたので、念のため受付はどこかと尋ねようとしてその人がホテルの人ではなくA社の担当者であることに気がつきました。教えてもらったとおりにエレベーターホールに向かうと、そこにもA社の担当者が。株主相手は気ぃ遣うよね、やっぱり。

 最上階の宴会場が会場となっており、入口の前に受付が。議決権行使書用紙と引き換えで入場票をもらいました。

 議決権行使書というのは、その総会での決議事項についての賛否を記入して事前に招集者に提出することで総会に出席しなくても議決権を行使できるようになる書類です。株主であることの証明と議決権の二重行使回避のために引き換えることになっているのでしょう。議決権行使書用紙は招集通知及び添付書類とともに開催日の前週に郵送されてきました。なお、招集通知については旧商法・新会社法ともに、株主総会の日の二週間前までに株主に対してその通知を発すること、となっていています。「発すること」であって到着期限ではありません。

 入ってみると会場はこんな感じ。

会場の見取図
[会場の見取図]

 株主席は100人弱が座れるようになっており、開始時間までにその8割以上が埋まりました。うち、女性は5名ほどで圧倒的に男性ばかり。皆さん、軽装で、ビジネスマン風の人は意外にも少なかったです。平日開催なので勤めのある人は来にくいということもあるのか? 平均年齢は目測でおそらく65歳以上であろうかと思われました。むぅ、わたしもオジサンと呼ばれるのがふさわしい年齢なのですが、ここでは単なるケツの青いハナタレ小僧です。

 午前10時、定刻にA社株主総会開始。

 まず、社長の挨拶から。さすがに社長も緊張を隠せない様子。定款の規定により自分が議長を務める旨を告げ、開会を宣言。

 それから注意事項の説明などがあった後、今度は事務局から議決権に関する報告があり、事前に議決権行使書を提出している株主を含めて出席株主は千余名(実際には正確な数字が報告されています)で本総会における決議に必要な定足数を満たしていると会場に告げられました。ここまでで開会から5分程度。

 A社の期末の株主数は五千名を超えていましたから、議決権を行使した株主は結局20%程度、実際に総会に出席した株主となると2%もいないという勘定になります。こんなもんなんでしょうか? まあ、全員出席されたら会社の方は大変でしょうけど。前述のとおり用意された株主席は100人分ぐらいだったのですが、それでちょうどよく納まっていたところをみると、例年出席者数は同じくらいで、今年も予測の範囲ってとこでしょうか。でも、もし予測以上の出席者があって収容しきれないという事態になったら、どうするんでしょう。対応策は準備してあるのかな。事務屋としては気になるところです。

 ちなみに報道によりますと、かのライブドアの2006年に行われた定時株主総会は、期末の株主数約13万2500人(!)に対して来場したのは約500人で、幕張メッセに5000人分の席を用意した会場はがらがらだっただったとか。経営幹部が逮捕され上場廃止になる前の定時株主総会(2005年)では2006年の10倍ぐらい来場したらしいのですが、それでもやっぱり全体の数%ってとこですか。そんなもんのようです。

 A社の定款によれば、通常の決議は総会に出席した株主の議決権の過半数が必要、となっているのですが、今回の議案には新会社法対応に伴い、会社の基本法たる定款そのものの一部変更があるので、その決議には議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、かつその議決権の3分の2以上が必要、と要件が厳しくなっています。もっとも、A社は上位10人の株主の持株比率が50%近いという状況なので、大株主の了解を事前に取り付けておけばほとんど問題は無いのかも。

 続いて総会の目的事項に入り、最初は報告事項から。

 会場の奥に並ぶ会社幹部の席から常勤監査役(多分)が立ち上がり、問題は無かった旨の短い報告を監査人・監査役会を代表して行った後、事業報告。これは事前収録したものをスクリーンで流す形で行われました。おおっ、上場会社ともなるとこんな風にやるんですね。担当役員が口頭で説明するよりこの方が円滑で楽に進行するよな、確かに。

 報告事項は15分程度で終了。議長が質問を受け付けると議場に告げるも、反応は無し。

 次は決議事項。議案は3つあり、順番に審議に入りました。ただし、審議といっても一から検討を始めるわけではなく、基本的には招集通知の参考書類に記載済みの各議案の内容が承認されるかされないか、ということになります。

 第1号議案は、黒字の会社ならお決まりの剰余金処分。議場から質問はなく、議長から採決を行う旨が告げられると、株主席の最前列付近から「賛成!」という声と拍手が。きっと動員された従業員株主でしょう。ごくろーさん。

 これを受けて議長は賛成多数により本件は可決された旨を議場に告げました。いちいち議決権の集計をしたりはしません。大株主の事前了承で議決要件に足りてれば実務上必要ないということなのでしょう。一丁あがり。

 第2号議案が、定款の一部変更。ここで初めて株主が挙手して立ちました。会社の担当者がマイクを渡すため、小走りでその株主の元へ。

 マイクを持った質問者はやはり年配で、70歳過ぎのように見受けられました。総会の最初にあった注意事項に従い、入場票記載の受付番号と名前を告げてから、定款に規定されている取締役の任期について、2年から1年にしてはどうかと提案。

 これに対して議長は回答者として専務を指名。立ち上がった専務は、検討したことはあったが、長期的視点に立った日本的経営の良さを生かすためには任期が1年では短いという結論に至ったので、2年でお願いしたいと回答。

 他に質問はなく、議長から採決を行う旨が告げられると、~以下同文。

 第3号議案は、役員賞与支給。これも議場から質問はなく、議長から採決を行う旨が告げられると、~以下同文。

 これで決議事項も終了。10分弱とほとんど流れ作業のように進行しました。

 議長が、本日の目的事項はすべて終了したとして閉会を宣し、これであっさり株主総会終了。全行程で約30分。いささか拍子抜けではありました。総会屋さんらしき人も来ておらず、業績好調ということもあってか株主席もピリピリした空気はなく、なんだかご隠居さんの暇つぶしに近いようなノリを感じました。

 会場を出るときには紙袋入りのお土産が手渡されました。この会社は一般向けの商品は作っていないので中身に自社製品は無く、会社の名前の入ったカレンダーと缶ジュースが2本。一人分のコストはせいぜい数百円ってトコで常識的な範囲でしょう。ただ、こういうのって利益供与のからみで規制とかないんですかね? やたら豪華なところがあるらしいですけど、わたしは本来必要ないものだと思ってます。

 総会そのものは終わったのですが、会社側から、これから株主懇親会を開催するのでお時間のある方はご参加くださいと声がかかりました。株主懇親会というのは、株主と会社の親睦の機会を設け、株主に会社の事業への理解を深めてもらうために開催されるもので、法的に開催の義務があるわけではありません。場違いな気がして一瞬躊躇しましたが、後学のために来たのだからとこちらも参加してみました。

 会場は同じ階の宴会場で、総会の会場の隣でした。株主の参加者は25名ほど。コーヒーとクッキーが出ました。質素で良いと思います。懇親会もやたらお金をかけてやる会社があるらしいですが、会社の株主に対する義務とは、業績を上げてしっかり利益還元することであり、接待してご機嫌取りすることじゃない、とわたしは思うのですが。

 会場の前方にスクリーンが配置され、近くには会社の幹部・担当者が座りました。一山越えたということで、会社の人たちは総会のときよりだいぶ和んだ表情をしていました。気持ちはわかります。

 午前10時45分、専務の挨拶で始まり、まず概況報告、中期計画の進行状況、自社製品の紹介と15分ほどの説明がありました。この間、株主側に特に反応は無し。

 続いて工場の様子などがビデオ映像でスクリーンに映し出されました。凝ったものではなく、さほどおもしろくはなかったです。

 最後に株主からの質問が受け付けられましたが、総会のときとは打って変って続けて5人も質問に立ちました。株主側も総会より懇親会の方が気楽ってことなんでしょうか。

 質問内容は、「設備投資に力を入れるそうだが、それに見合う成長は可能なのか」とか「他社から買収される危険はないのか」といったところで、いかにも株主が気にしそうな事柄ばかり。

 ・・・だったんですが、3番目に質問に立った株主には参りました。

 いわく、「良い会社に投資できてうれしい。ところで、さきほど丁寧に会社のことを説明してもらったのだけど、正直半分も理解できなかった。いったい、こちらは何をやっている会社なのか?」

 こらえきれずに会場のあちこちから失笑が・・・。社長が終始穏やかに、かつ一生懸命答えていましたが、困惑の色がありありと浮かんでいました。社長やるのも楽じゃないッスね。

 しかし、この株主さん、会社の事業内容を知らない、理解もできないというのにどういうつもりで投資なさっているんでしょう? やはりかなり年配の方で、わざとこういう質問をして会社側を困らせてやろうとしているようにもふざけているようにも見えず、失礼ながら、「こういう人が悪徳商法とかに引っかかるのでは?」なんて考えてしまいました。

 ともあれ、質問も一通りすんだ午前11時45分、株主懇親会もお開きとなりました。総会・懇親会あわせて正味1時間半ってとこですね。初めてということもあって、いろいろ興味深く(このレポート用にメモ取るのも忙しかったし)、長いとは感じませんでしたし、とても勉強になって有意義でした。たまにはマジメに社会参加も良しよ。

追記:総会の翌日にはもう、決議通知が自宅に届いていました(郵送)。なんとなく嫌味の一つも言いたくなるような気分になりましたが、こんなもんなんでしょうね。