1. libretto ff1100 : Vine Linux 3.2 インストール

東芝の旧式小型ノート機 libretto ff1100 に Vine Linux 3.2 をインストールしてみました。
一応、"intel inside" とはいえ搭載 MPU は、Pentium4 でも 3 でもなく、なんと 2 ですらない初代 Pentium 266Mhz 、加えてメモリが 64MB にハードディスクは 3.2G・・・。今となっては力不足もいいところですが、壊れたわけでもないのにその辺に放り出したままというのももったいないような気がするし、場所をとらない小型の筐体(VHS のカセットより一回り大きい程度)と旧型ノート機ならでは(?)の低消費電力をもってすれば、御家庭用 Linux サーバにして遊ぶにはピッタリ、などと思いまして。
しかし、この libretto ff1100、CDドライブを内蔵しておらず別売りのブート可能な外付けCDドライブ(けっこう高価い)も持っていないとなると、最も一般的なCDからブートしてインストールという手が使えず、試行錯誤の末、ネットから FTP 利用でインストールにこぎつけました。
このやりかた、案外知られていないみたいですが難しくはないですし、libretto に限らずCDドライブ非搭載のノートPCに Linux をインストールしようとして苦労されている方には参考になりそうなので紹介します。とはいえ、インストールの過程すべてを書くのは大変なので、大雑把に要点だけですが・・・。インストール全般の詳しい説明は他に優れたサイトがいくつもありますので、そちらへ。
1.インストールの手順
インストールの手順としては、
- ネットインストール用ブートディスクをイメージファイルから作成する。
- libretto の BIOS をフロッピーからブートできるように設定する。
- 作成したブートディスクから起動させる。
- インストール・プログラムが起ち上がるので必要項目を入力・選択する。
- 自動的に必要なファイル群がダウンロード・インストールされる。
という流れになります。
2.インストールに必要なもの
- インストールする PC 本体
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わたしの場合,libretto ff1100 ですが、同系の libretto ff1050・ff1100V はもちろん、フロッピーとLANが同時に使える機種なら同様の手法が使えるんじゃないかと思います。保証はできませんが・・・。
- FDドライブ
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ff1100 の場合は唯一のカードスロットを LAN に使わせる関係で USB かつブート可能なもの。空のディスクも1枚必要。
純正品なら安心ですが ff1100 のは(型番:PA2680UJ)税込定価15,750円とやや高価。他社製品でもブートできるものはあるはずですが、PCの世界では ff1100 もかなりの古物となってしまった現在、対応の確認もなかなか困難です。わたしが使っているロジテックの LFD-31UJ は ff1100 でブート可能ですが、とっくに生産終了の模様。
なお、以前ネットで調べたところ、IOデータのサイトで同社の USB-FDX4・USB-FDX/2 が ff1100 でブート可能と対応表に記載されていたはずですが、現在はそのページが見当たりません。わたし自身は使用経験がありませんので、残念ながらブートできると保証はできませんが、すでに同機種をお持ちの方は試してみてもよいのでは?
- LANカード
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後述するネットインストール用のブートディスクに対応しているものが必要なのですが・・・。どのカードなら対応していているのかさっぱり不明。わたしが使っているのは Laneed のLD-CDL/TXA(ちなみに 2005 年 1 月秋葉原の某店で税込 880 円と投売りされていたモノ)。
- インターネット接続環境
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上記LANカード経由で接続可能なもの(ルータータイプのモデムを介して接続するADSLとか)。ブロードバンドがほぼ必須。遅くとも 1Mbps 前後くらいの速度が出ていることが望ましいと思います。従って ISDN 程度の接続速度でのインストールは、不可能でないにしてもお薦めはできません。
なお、すでに自宅で FTP・HTTP サーバを運用している方についてはそちらからインストールすることもできます。
3.ブートディスク作成
まずブートディスク作成に必要なイメージファイルとツールを入手します。どちらも Vine3.2 のインストールCDに収録されています。インストールCDの入手方法については Vine Linux のホームページ を参照してください。必要なファイルは下記のとおり。
- pcmcianet.img
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ブートディスクのイメージファイルです。インストールCDの \images フォルダにあります。
- rawwritewin.exe
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WinXP で使えるイメージファイル書込ツールです。インストールCDの \dosutils フォルダにあります。
なお、Vine Linux のホームページからリンクされているサーバから直接上記ファイルをダウンロードすることも可能です。その場合、http://www.ring.gr.jp/ なら /pub/linux/Vine/Vine-3.2/i386/ にインストールCDと同名のフォルダがありますのでそちらから。他のサーバも類似のフォルダを探していけば見つかると思います。
必要なファイルが手に入ったらツールを使って空いているフロッピーディスクにイメージを書き込みます。
rawwritewin.exe を起動後、
- プログラム・ウィンドウの「Write」タブに切り替える。
- 書き込むディスクの入っているドライブを選択する。
- 書き込むイメージファイルを選択する。
- 「Write」ボタンを押す。
で、書き込みが開始され、「Image successfully written.」というメッセージが出たらできあがり(下の画像を参照してください)。

4.BIOS 設定
電源を入れた直後に [ESC] キーをしばらく押すとbeep音が鳴り、画面に
Check system. Then press [F1] key.
という表示が出るのでその指示通りに [F1] を押します。これで BIOS 設定画面が出ます(下の画像)。設定画面の下部に表示されているキー操作の方法に従って、必要な部分のみ変更します。
- USB Legacy Emulation を Enabled へ(デフォルトは Disabled)
- Boot Priority を FDD->HDD へ(デフォルトは HDD->FDD)
それぞれ変更できたら Save して終了です。なお、Linux インストール後は元に戻しておいたほうが良いでしょう。

5.インストール
本体にブートディスクを挿入したUSB-FDドライブとLANカードを接続してから電源を入れるとインストールの初期画面が表示され、英語で「インストールはグラフィカルにするか、テキストにするか」云々という表示が出ますが、選択してもネットワーク・インストールの場合は強制的にテキストになってしまうので、直に Enter キーを押してかまいません。すると、システムのチェック等があり、しばらくした後、言語の選択が表示されますので、お好みの方を選択してください。以下、japanese を選択したものとして説明します。続いてキーボードの選択があり、そしてインストール方法の選択(下の画像)ですが、ここでメディアタイプとして FTP・HTTP が表示されない場合はおそらく、LANカードが認識できていない可能性が大で(他にはブートディスク作成時に使うイメージファイルをまちがえたというのもありそう)、残念ながらネットワーク・インストールができません。カードを変えるか BIOS 設定のカード関係を変更する必要があると思われます。

FTP・HTTP が表示されている場合はそのどちらかを選んで先に進みます。どちらであっても手順はほぼ同じです。以下、FTP を選択したものとして説明します。
次に TCP/IP の設定です(下の画像)。

ここも少し厄介といえば厄介です。IP について理解しておられる方は特に問題ないかと思いますが、そうでない方に乱暴な説明をすると、ルーター機能のついたモデム等を使ってインターネットに接続している場合、「今まで IP アドレスの設定をしたことはないがパソコン等でネット接続は可能」という方はデフォルトのまま先に進んでください(上の画像)。IP アドレス等はルーターが自動的に割り当ててくれます。「導入時に IP アドレスの設定をした」あるいは「サーバーをたてるためにルーターの DHCP 機能は切っている」という方は IP アドレスをルーターの説明書等を参照して自分で割り当てる必要があります(下の画像は設定の一例)。

デフォルトゲートウェイとプライマリネームサーバの IP アドレスは、通常はルーターのアドレスとなります。
次に FTP のセットアップですが HTTP でも設定部分はほぼ同じです(下の画像)。

サーバは Vine Linux のホームページ のリストから選びます。例として、ftp://ftp.ring.gr.jp/ ならサイト名は ftp.ring.gr.jp (ftp:// は不要です)、ディレクトリは /pub/linux/Vine/Vine-3.2/i386 (画像では入力スペースをはみ出しているので途切れています)となります。他のサーバでも若干違いはあるものの、ほぼ類似のディレクトリ構造ですので一度実際にサーバにアクセスしてたどってみれば判断がつくでしょう。
自宅で FTP・HTTP サーバを運用している方はサーバにインストールCDの中身をコピーしてそこからインストールすることもできます。その場合、サイト名はサーバの IP アドレスを入力し、ディレクトリはインストールCDのコピー先を指定してください。
これで設定が正しければインストール・プログラム anaconda が起動し、マウスの選択から順に表示される項目を設定した後、必要なファイルがダウンロード・インストールされて終了です。所要時間は接続している回線の接続速度とインストールするタイプにもよりますが、わたしが下り 1.5Mbps 前後の ADSL を使って最小インストールを選択した場合では、1時間少々かかりました。
すでに充分、長文になってしまったので anaconda 起動後の設定については他のサイトを参考にしていただきたいのですが、一点だけご注意しておきますと、 ビデオカードの設定(下の画像)で「OK」を選択するとダウンロード・インストールの後、Xorg の設定に移るはずなのですが、ff1100 ではなぜかエラーメッセージが出て異常終了してしまいます。

これを避けるためにはビデオカードの設定で「X の設定を行わない」を選んでください。
X を使わない場合はこれだけでよいのですが、使いたい場合はインストール後に Xorg の設定をする必要があります。その方法をごくかいつまんで説明しますと、
- xorgconfig を使って設定しファイル /etc/X11/xorg.conf を作る。
- エディタで xorg.conf を開き、必要な部分を修正する。
- setwm で使用するウィンドウマネージャを決める。
- startx で起動。
ff1100 は 800x480 という特殊なディスプレイを使っているため、xorgconfig を使った設定だけではキチンと X ウィンドウのサイズを合わせることができません。気になる方は修正ということになります。 東芝 Linux 情報のページ に寄せられた libretto 系のインストール情報を参考にすれば 800x480 用の画面設定が書けます。
もっともメモリの増設等のパワーアップをしていない素の ff1100 は X+GNOME の環境を動かすにはちと非力で、わたしは決してお奨めはしませんし、わたしはふだん ff1100 では X を使っていません。ただし、一応、前記の方法で設定して 800x480 で動作するところまでは確認しました。