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RONNIE LANE

蛇足:映画「ロニー」を観に行くの記

 2007年5月12日、映画 "The Passing Show: The Life and Music of Ronnie Lane" が日本で上映される日がとうとうやってきました。この作品、タイトルから察せられるとおり、Ronnie Lane の生涯を描いたドキュメンタリーで、英国BBCで制作され2006年1月に放映されたTV番組をもとに映像を追加して劇場用映画として再編集したもの。邦題は「ロニー~MODSとROCKが恋した男~」。

 わたしがこの作品の存在を最初に知ったのは2005年12月、The Official Ronnie Lane Website(現在、閉鎖)に英国でのTV放映の告知が掲載されていたことからでした。それからほぼ1年半になります。すでに海外ではDVD化されていて輸入盤が日本でも購入可能であり、貴重な映像が収録されていることは予想できたので、英語がわからなくて眺めるだけでも楽しかろうとは思ったのですが、ドキュメンタリーという作品の性格上、やっぱりキチンと内容を理解したいし、さりとてそれほど売れる作品ではないだろうから手間のかかる日本語盤制作は難しいだろうし・・・。

 などとゴチャゴチャ考えていたところ、 今年1月に音楽雑誌で「日本で上映の予定がある」という情報 を発見し、半信半疑ながら以来、続報に注意していたのですが、3月末にネットで検索から 「5月公開決定」を知り 、安堵とともにこの日を心待ちにしておりました。 半月前には前売券も手に入れて 、もう準備万端。

 さて、当日。

 上映は21時からということだったので、「1時間前に渋谷に着いていればだいじょうぶだろう」とのんびり構えていたのですが、前日あたりに「小さな映画館だし、公開初日の土曜日だから混むかも」と急に不安になりまして、その日は昼飯食ったらすぐに家を出、渋谷へ。

映画館(建物の2階部分)
《映画館(建物の2階部分)》

 映画館は シアターN渋谷 といい、渋谷駅西口南改札そばの歩道橋から国道246号を渡ってすぐのところにありました(写真)。渋谷の一番賑わっているところからは、ほんの少し離れたところです。14時半ごろに着きました。映画館のホームページに説明があるのですが、ここは基本的に整理番号順の入場というちょっと変わった方法をとっているので、すぐ受付で整理番号を発行してもらいました。35番でした。もう少し遅くとも十分間に合ったようですが、でも14時半以前に既に34人も来てたのか・・・。うーむ。

当日出ていた映画館の上映案内
《当日出ていた映画館の上映案内》

 受付で伝えられた集合時間は20時50分(集合時間までに来ないと整理番号が無効になる)。思いっきり余裕があるのでヒマつぶし。何をしていたかは映画には関係ないので、ここでは 割愛

 20時30分に戻ってくると、映画館の入口の前にも中のロビーにも開演を待つお客さんがだいぶ集まっており、ロビーにはロニーサイズの MODS スーツやスクーター( VESPA )が展示されていたりして、整理番号をもらったときの閑散とした様子から比べると公開初日らしい雰囲気になっていました。ロニーサイズの MODS スーツはたしかに小さめ。今の日本人男性のサイズからいってもSなんじゃ? 聞いたことはないけど Ronnie もスクーターに乗っていたんでしょうか?

 ところで、当日来ていたお客さんはやっぱりモッズ・ファンが大半だったんでしょうか? ざっと見渡したところ、平均年齢は失礼ながら若いとはいいがたい感じ(わたしも立派なオッサンですが)。目測では遅い時間帯ということもあってか10代は見当たらず、30代から上が中心という状況でした。Ronnie Lane のファンの多くが何か少し言いたいであろう邦題については大目にみるとして(笑)、今回の上映実現が日本におけるモッズ・ファンの増加に支えられているのは確かなようです。わたしはといえば、いきなり Slim Chance から入ってそれから Faces 、Small Faces とさかのぼっていったクチなので、ちょっと違和感がありますが。

 わたしが初めて Ronnie Lane の音楽に触れたのは多分1990~91年ごろ、残念ながら今や伝説となっている Ronnie の日本公演は観ていません。公演が行われた時点では Ronnie の存在すら知らなかったハズ。公演の前後の時期に日本で発売された "Anymore For Anymore" のCD(確か世界初CD化だったと思います)の広告か記事をたまたま音楽雑誌で見て、あのジャケットの写真が気に入り、ほとんど予備知識無しに買ったおぼえがあります。で、中身も気に入ったわけですが、一ヶ月間、朝昼晩と聴きまくっていた、という感じの気に入り方ではありませんでした。そもそも Slim Chance の音楽はそういうものではないような気がします。その代わり、初めて聴いてから十数年、折に触れては彼らの音楽を聴き続け、変わることのない親しみを感じてきました。そしてこれからもきっと大事な音楽であり続けるだろうと思います。わたしにとって Ronnie Lane とはそんな存在です。閑話休題。

 そう、それから危うく見落とすところだったのですが、プログラムもちゃんと売っていました(500円・写真↓)。

映画のプログラム
《映画のプログラム》

 割と簡単なつくりですが、注目すべきは Ronnie の最期を看取った3番目の妻・Susan Gallegos Lane さん(出演者の一人でもあります)のインタビューが掲載されていること。アメリカ時代の Ronnie の関係者の話が読めるというだけでも、わたしにはありがたかったです。

ジミースコーン
《ジミースコーン》

 20時50分、整理番号順に入場開始。初日は公開記念のプレゼントがあり、入場者にはジミースコーンという英国風のお菓子(写真)が配られました。モッズ御用達スィーツなんだとか。

 席数は100くらい。すべて埋まり、立ち見が20人くらい。なかなか盛況でした。よかった、よかった。わたしは前から4つ目の列のほぼ中央と非常にいい位置に座れました。これまた、よかった。

 上映前に公開初日のためか関係者(女性・名乗りませんでしたが配給会社の人か?)の挨拶があり、そのあとにはこれも公開記念のイベントとして、ザ・コレクターズの加藤ひさしさんと古市コータローさんによるミニ・アコースティック・ライブがありました。演奏されたのは下記の3曲。

  1. How Come
  2. Annie
  3. My Mind's Eye - 日本語バージョン -

 ほとんど白痴のような感想ですが、スッゲーうまかったです! ザ・コレクターズは今まで聴いたことがなかったので、演奏が始まるまではどんなものやらと少し不安もあったのですが、ギター2本と歌だけで見事に曲を再現していました。加藤さんの声は Ronnie の声質に近いのか、実に合っていましたし、うまい人ってこんな風に弾くんだなと、楽器全般ダメなわたしは途中から古市さんの手の動きばっかり見てました。しかもわずか数メートルの至近距離で聴けたのですから、ザ・コレクターズのファンに恨まれそう(笑)。

 お菓子のプレゼントにライブと、これだけでほとんど元を取ったような気になりましたが、それからが本編。素晴らしき90分間でした。

 現在公開中ですので詳細には触れませんが(論評はいずれ日本盤DVDが発売されてからでも・出るよね?)、内容は Ronnie の生い立ちから亡くなるまでを彼の家族や数多くの仲間達へのインタビュー、そしてTV・ラジオ出演時の Ronnie 本人の談話を元に構成したものです。時期もさまざまな映像や写真が使われていますが、自然な雰囲気にこだわり5年もかけたという制作側の配慮が感じられる、非常に丁寧で愛情のこもった作りです。なんと、日本人で観た者はいないといわれる(笑)映画 "Mahoney's Last Stand" の映像も、ほんの少しですが使われています( "Mahoney's Estate" という別の題があったことをこの映画のクレジットで知りました)。

 何よりも映像に残る Ronnie の笑顔がたくさん見られたのがうれしかった。Pete Townshend や Eric Clapton はわりかしマジメにインタビューに答えていますが、Ronnie のバンドの仲間達の思い出となると、もう笑い話ばっか。いいなぁ、こういうの。それにしても、今、ネット・雑誌等各所で見かけるこの映画の紹介文には「孤高のブリティッシュ・ロック・スター、ロニー・レイン」なんてありますが、「孤高の人」のドキュメンタリーならこうはならんだろ。違う!

 「もっと観ていたかった」という点を除けば、制作関係者に感謝、感謝の一本。まだ未見の Ronnie ファンのあなた、さあ、渋谷へGO!

 という状態で映画館を出たところで、アンケートをとっている女性に捕まりました。

イラスト入ポストカード
《いただいたポストカード》

 某エンタテインメント情報誌の方だったのですが、「この映画の点数を教えてほしい」と訊かれて、つい「100点!  全項目満点!」とまたも白痴丸出しの回答をしてしまい、件の女性、吹き出していました。さらに雑誌に掲載するのでと、写真撮影とコメントを依頼されたのですが、それはさすがに拒否(お嬢さん、相手を選ぼうよ・・・)。アンケートのお礼にと、その雑誌の表紙に使われたイラストが入ったポストカードをもらいました。ども。

 それから夜風に吹かれつつ渋谷駅に向かい、電車の中でアルバム "Anymore For Anymore" を聴きながら心地よく家路につきました。そしたらうっかり乗換えをまちがえて、家とは反対方向に連れてかれちゃいました。あやうく終電、逃すところだったぁ~。