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RONNIE LANE

8. 続・Ronnie を道案内に

 Ronnie と関係ありそうな音楽を調べていくうちに次々とCDが増えていき、長くなってしまったのでページを替えました(笑)。

The Capitol Years

The Capitol Years
McGuinness Flint (1996)

 McGuinness Flint がデビューの1970年から1971年にかけて Capitol Records に在籍していた時期に残した音源を編集したCD。1枚目、2枚目のアルバムのほぼ全曲にシングル曲が収録されています。26曲も入っていてなかなかお得です。

 McGuinness Flint はその名の通り、Tom McGuinness(元 Manfred Mann )と Hughie Flint(元 The Bluesbreakers )の構想から生まれたバンドで、ジャズ、ブルース、アイルランド音楽、インド音楽、The Beatles に The Band といった二人が共有していたさまざまな音楽志向を一緒に表現できる仲間を集めて結成されたのだそうです。他のメンバーには元 Apple Records の専属作曲家で後に "Anymore For Anymore""Rough Mix" の制作に参加する Benny Gallagher と Graham Lyle( Benny Gallagher は "Mahoney's Last Stand" にも参加)がいました。 Hughie Flint も "Lucky Seven" 制作メンバーの一人でしたし、このアルバム全曲のプロデューサーは Faces 、あるいは "Mahoney's Last Stand""Rough Mix" でおなじみの Glyn Johns となっています。

 これだけ人のつながりがあれば当然 Slim Chance との音楽的なつながりも想像されようものです。実際、"Malt & Barley Blues" のイントロなんか "Anymore For Anymore" 収録の "Careless Love" かと勘違いしそうなくらい似ています。どちらもきっと Gallagher と Lyle の仕事なんでしょう。"When I'm Dead & Gone" のイントロのマンドリンもいいなぁ。期待どおり、そこかしこに Slim Chance を連想する要素がちりばめられています。Slim Chance ファンなら入手をご検討されたし。知名度は低くとも(つっても、"When I'm Dead & Gone" はなんと全英シングル第2位になっているのですが)、この時代のロックの豊かさを感じられるよい作品ですよ。

 バラエティに富んでいるという点ではむしろ Slim Chance 以上かも。しかもポップです。メンバーに華やかなスターっぽい人が見当たらない分、どうしても地味目な感じはぬぐえませんが(笑)。

 なお、Graham Lyle は映画 "The Passing Show: The Life and Music of Ronnie Lane" に出演しており、Slim Chance の思い出を語ってくれています。

The Grease Band

The Grease Band
The Grease Band (1971)

 こちらも Ronnie のバンドに参加した人物が、それ以前に在籍していたグループ。

  "Mahoney's Last Stand""Anymore For Anymore""See Me""Rocket 69" に参加したドラムの Bruce Rowland 、同じく "See Me""Rocket 69" に参加したギターの Henry McCullough がいました。Henry McCullough は "Rocket 69" 収録の Fats Domino のカバー "I'm Ready" でリード・ボーカルも披露しております。二人とも、やはり映画 "The Passing Show: The Life and Music of Ronnie Lane" に出演しており、Ronnie をよく知る人物です。Faces と一緒にツアーをしたのが Ronnie と知り合うきっかけだったとか。やはりアメリカ音楽への愛情が彼らを結びつけたのでしょうか。渡米後のインタビューで Ronnie は「もう一度 Henry McCullough とアルバムを作りたい」と言っていたそうです。それはもうかなわぬ願いとなってしまいましたが・・・。

 The Grease Band はもともと Joe Cocker のバックバンドでしたが、Cocker がアメリカでの活動を優先して離脱した後、残されたメンバーで1971年に発表したのがこれ。

 英国版 The Band ともいわれたこのバンドの音は、泥臭く無骨で「男は無駄口叩かず肉体労働」みたいな姿勢を感じます。やはり The Band の影響が濃いといわれる前出の McGuinness Flint の楽曲にさりげなく見え隠れする後期 The Beatles 的音作りとの対比がなかなか興味深いところです。たしかに Slim Chance と共通するような部分もありますが(看板ボーカルに逃げられたってのも、どこぞのバンドに似ているな・笑)あちらのような軽妙さはなく、こちらはどうも「不器用なロックンロール野郎ども」といったところ。

 ほぼ、全曲メンバーの作品。荒削りな感触の曲が多い中、のどかさと男の哀愁が同居する "Mistake No Doubt" や "To The Lord" 、"The Visitor" あたりが印象に残ります。

Music From Big Pink

Music From Big Pink
The Band (1968)

 アメリカン・ルーツ・ミュージックをロックの立場から追求した先駆的名作として、わたしなぞが講釈たれる必要もないアルバムですね。しょうもないこと書かないよう気をつけないと・・・(冷汗)。

 Ronnie が The Band の曲をカバーしたり直接メンバーと交流したりといったことはなかったようですが、前出二者、McGuinness Flint も The Grease Band も The Band の影響下に成立したグループとされますし、Slim Chance もしばしば The Band を引き合いに出されて評価されることが多いものですから、これまた「避けて通るわけにはいかんだろ」と取り上げてみました。

 発表当時、英国ロック界に与えた衝撃は後の世代のわたしなどにはちょっと想像できないほどのものだったらしく、それまでサイケにフワフワした音楽ばかり( Stones ですら、おフランスなピアノにのって "She's a rainbow ~" とか歌っていたんですから)だったのが急転回するきっかけになった作品なのだとか。ある本に「1968年のロンドンで最もヒップな音楽が The Band だった」と書かれているのを見た時は、頭がクラクラしました。とうてい都会的とは言い難く愛想もないこの音楽がヒップ・・・。

 あくまで想像ですが、このアルバムが発表される以前の時期、後期 Small Faces ではサイケどっぷりだったのに対し、その発表後にあたる時期に再編された Faces 以降では音楽性が明らかに泥臭くルーツ寄りに変化したあたり、Ronnie もまたその衝撃をまともにうけた一人だったのではないかと思います。元々モッズで流行に敏感な人だったわけですし。

 わりとよく知られたことですが、The Band のメンバー5人のうち4人が実はアメリカ人ではなく、カナダ出身だったという事実も興味深いものがあります。伝統文化というものは実は外部の人間の方がその価値を認識しやすい(現地の人にとってはその存在は日常的かつ当たり前であるため、かえって見過ごされる)一つの例でしょうか。

 と、いろいろなことを考えるのにふさわしい、重みのある音楽です。決してわかりやすくはなく、名盤といわれるにもかかわらず一聴して「スゴイ!」と感じる人は少ないかもしれません。しかし、ジワジワ、きます。聴き続けて十日ほどでようやく「良い!」と思うようになったわたしは音感鈍すぎですが(笑)。それでも "Tears Of Rage" と "I Shall Be Released" には圧倒的な説得力を感じます。

Vol. 1

Vol. 1
Disorder On The Border (2003)

 「Disorder On The Border ? そんなグループ、知らんぞ、聞いたことないぞ」と Ronnie ファンでも大半の方はそう思うのでは? ここまでご紹介してきた作品の中でもその知名度の低さという点では抜群のものがあります。

 このアルバム、CD化されたのは2003年ですが、それより以前、1993年に英国でカセットテープで発売されていたようです。曲順は違いますが、収録曲は現行と同じです。その時のアルバムタイトルが "Disorder On The Border" 。再発売に際してグループ名にしたんですね。じゃあ元のグループ名はといいますと、1993年当時はメンバーの名から Ricard, Watkins & Hart と名乗っていたそうです。

 ここまで書けばお気づきの方もいらっしゃるかと思います。この中の Hart とは "Ronnie Lane's Slim Chance" から Slim Chance に参加し、以後 "One For The Road""Rough Mix""See Me" に至るまで Ronnie を支え続けた男、名曲 "Harvest Home" の共作者でもある Charlie Hart のことです。 "One For The Road" のジャケット写真に当時の Slim Chance のメンバー5人が写っていますが、5人のうち向かって一番左端に座っているのが彼。 "Live At Rockpalast 1980" では彼の演奏している姿も見られますし、やはり映画 "The Passing Show: The Life and Music of Ronnie Lane" にも出演しています。

 一方、他の二人、 Gary Rickard と Geraint Watkins は The Balham Alligators という英国パブロックバンドの出身。

 この Disorder On The Border は Ricard がギター、Watkins がアコーディオン、そして Hart がフィドル(バイオリン)という布陣で、ほぼ3人だけで演奏しているようです。曲の多くは Geraint Watkins が歌っていますが、Charlie Hart も自作の1曲("C'Est Ca")だけボーカルをとっています。彼の歌はお世辞にもうまいとは言えませんが、そこはまあご愛嬌というところで。

 Disorder On The Border(境界上の混乱?)というグループ名からは「なんでもごった混ぜ無国籍風の怪しげな音楽」を連想しそうですが、聴いてみると「いなかの村祭りに呼ばれてきた旅回りの楽団」のようです。さすが元 Slim Chance がメンバーにいるだけのことはあります(笑)。シンプルでありつつ伸びやか、そして楽しい! アコーディオンとフィドルが手をつないで踊っているような、そんな感じの曲が並んでいます。フランス語の題の曲があるなど、アメリカ・ルイジアナ州の仏系の人々の音楽でアコーディオンやフィドルが多用されるケイジャンの影響が濃いようです。中でも収録曲の一つ "Allons Rock And Roll" はケイジャンのカバーらしいです。他に Sam Cooke のカバーなどもあり。

 知名度の低さは音楽の質には比例しないという好例。これもオススメです。

Evangeline Made: A Tribute To Cajun Music

Evangeline Made: A Tribute To Cajun Music
Various Artists (2002)

 「ぼくは今でもアコーディオンのようなアコースティック楽器を使いたい。うまく使えばそれは実に気の利いた楽器だとぼくは考えている。ぼくが今特に影響を受けているものの一つが・・・、そして長いこと、ずっと感化され続けているものの一つがケイジャン音楽なんだと思う。」

 こんなことを Ronnie は言っていたそうです(おそらく "See Me" 発表前後の発言)。

 Ronnie がそう言っていたのならと、俄然ケイジャン音楽が聴きたくなったのですが、まったくなじみがない分野なのでどの作品を選んだらよいのやらさっぱり見当がつかず悩んでいたところ、たまたまコレを発見し購入してみました。ケイジャン音楽をロック系のミュージシャンがカバーしたトリビュート・アルバムです。

 参加者は・・・、う~む、こっ、これはなんちゅう顔触れなんだ!

 Linda Ronstadt 、John Fogerty 、Nick Lowe 、Linda Thompson 、Patty Griffin 、Richard Thompson 、David Johansen・・・。一般受けするかはともかくそのスジの方にはたまらない面子が並んでます。ケイジャンどうこう以前に参加者見ただけでほしくなる人がいるだろうな。

 お得意のアコースティック・ギター一本でカバーした Richard Thompson は例外ですが、他の曲はアコーディオンやフィドルが前面に出てくるものがほとんど。また、仏系の音楽だけにみなフランス語で歌われている(多分)あたりにもケイジャンの特徴がうかがえます。

 Patty Griffin は沈んだ雰囲気が彼女らしく、Ronnie がケイジャンをカバーしたらこんな感じかなと思ったのはカントリー畑から参加の Rodney Crowell 。でも、なんといっても "performed by an all-star band of Cajun musicians" とある "Vagabond Special" が最高です。カッ飛ばしのダンス・ミュージック! カッコいいったらないですよ。

The Rock

The Rock
The Frankie Miller Band (1975)

 スコットランド出身のボーカリスト Frankie Miller の3枚目のアルバムです。う~ん、ソウルだ、ソウルですねぇ。

  "See Me" 及び "Rocket 69" に参加していた前述の Henry McCullough とベーシストの Chrissy Stewart が揃ってバンド・メンバーとして名を連ねている、というところでご紹介。Chrissy Stewart は "See Me" 以前にも 初期 Slim Chance にも参加していたらしいです。

 あくまでここでは Frankie Miller を支える立場ですが( Henry McCullough の歌はコーラスのみ)、二人ともなかなかの仕事振りですよ。

 しかし、これは Slim Chance というより Faces を連想してしまいますね。70年代、バンド構成が同じ、強力なボーカル、さりげなくギターに対抗する鍵盤、アメリカ南部志向の英国人たちと共通項多し。Faces のハチャメチャ感はありませんが、その代わりホーンを前面に出すなど、より濃く渋く南部音楽を追求しています。バンドの顔としての華やかさでは Rod Stewart に一歩譲るにしても、歌の実力では Frankie Miller もまったく引けを取りません。実際、Rod その人が Frankie Miller を「最強の白人シンガー」と賞賛したとか。しゃがれ声好きにはたまらん魅力があります。

 "The Rock" とか "Drunken Nights In The City" とか、良い曲が並んでいて充実したアルバム。日本盤のボーナスについていたライブの "Sail Away"( Randy Newman のカバー)もカッチョえー。もっと知られていてもよさそうな作品ですが、(少なくとも日本では)今一つなのはなぜだろう?

 なお、Frankie Miller は1994年、脳溢血に襲われ生死の淵をさまよったとか。なんとか一命は取り留めたものの、音楽活動は中断せざるえませんでした。現在、復帰に向けてリハビリ中だそうです。回復を祈ります。

Eat It

Eat It
Humble Pie (1973)

 Small Faces を脱退した Steve Marriott がかねてから組むことを希望していた Peter Frampton と結成したのが、ご存知 Humble Pie 。もっとも、このアルバム発表以前にバンドの音楽路線をめぐって志向の相違が表面化し、Frampton は Humble Pie から去っていたのですが。

 黒人女性コーラスグループ・The Blackberries を迎えて制作された本作は、LPでは2枚組で1枚目A面はハードで重量感あるロックンロールを主体に、1枚目B面は Ike And Tina Turner 、Ray Charles といった黒人音楽のカバー、2枚目A面はアコースティックに。そして2枚目B面はライブと、質、量、ともに充実した意欲作で、Marriott 節全開というところ。全体に黒っぽい感覚にあふれており、Marriott の黒人音楽への憧憬が伝わってきます。バンドも全盛期と目されるころの作品だけに、その勢いと迫力を十二分に堪能できます。

 発表された1973年5月といえば、Ronnie が Faces を辞めたのと同時期。後のインタビューでは Faces の音楽を「うるさすぎた」と評し、同じ1973年の秋にあの The Passing Show を始めた Ronnie とは、Small Faces 脱退から5年も経っていないのに大きな隔たりを感じさせる音です。これはこれでいいんですけどね、でも、Small Faces 崩壊はいずれにせよ避けられなかったなぁといやでも思い知らされます。

 この3年後の Small Faces 再結成の時点でもその隔たりは埋まっていなかったようで、Ronnie はリハーサルには参加したもののすぐに離脱。再び Ronnie と Steve Marriott が組む時が巡ってきたのはさらに5年が経過した1981年。その成果が Majic Mijits となって結実したのですが、当時は陽の目を見ずに終わってしまい(泣)、その10年後、火災が原因で Steve Marriott が突然世を去ったことにより二人がそろってステージに立つ機会は永遠に失われました。合掌。

Truth & Beck-Ola

Truth & Beck-Ola
Jeff Beck (1999)

 いわゆる第1期 Jeff Beck Group が残した2枚のアルバムを1枚のCDに収めた企画盤。"Truth" が1968年、"Beck-Ola" が翌1969年の発表です。言うまでもないことですが、この時期の Jeff Beck Group には Ronnie の Faces 時代の同僚 Rod Stewart と Ron Wood が参加していました。 ということで Faces 以前の2人の姿がうかがえる作品でもあります。

 もっとも音は Jimmy Page が Led Zeppelin 結成時にモデルにしたというだけあってもろにブルース/ハード・ロックで、おちゃらけ Faces 的色彩はほとんど感じられません。あくまで Jeff Beck のアルバムだしね。

 とはいえ、Rod のボーカルはこの時点で Jeff Beck のギターに十分対抗しうる強力さ。さすがです。Ron Wood のベースは・・・、正直地味です(笑)。

 "You Shook Me" は Led Zeppelin も最初のアルバムで取り上げた Willie Dixon の曲。Zeppelin のハッタリっぽさはなく、質実剛健な感じ。"Beck's Bolero" は Beck 作じゃなくて Jimmy Page が書いた曲なのね。そういや、Ronnie は Page とも仲良かったんだっけ。"Plynth (Water Down the Drain)" は Rod と Ron 、それから Nicky Hopkins の共作になっていて・・・、あれ、雰囲気はずいぶん違うけどこれは Faces の "First Step" に入ってた "Around The Plynth" と同じ曲? 歌詞がかなり共通していますが。

 この2作をもって第1期 Jeff Beck Group は崩壊。実は Rod は次の Jeff Beck のバンドにも引き続き参加する予定だったそうなのですが、当の Beck がそのころ交通事故で重傷を負い(運転中に飛び出してきた犬をよけようとして対向車に衝突したとか)活動を休止せざるえない状態となったため、その話は流れてしまったとのこと。Rod が Faces に加入することになったのもそれがあってのことだったのでしょう。運命的ではあります。

Thirteen Years

Thirteen Years
Alejandro Escovedo (1994)

 こちらは Austin 時代の Ronnie の仲間、Alejandro Escovedo の作品。名前から察せられるとおりヒスパニック系で両親はメキシコからの移民。ソロになる以前には The True Believers というロック・バンドのリーダーであり、ソロとしては1992年から2014年現在に至るまでライブを含め14枚のアルバムを発表しています。本作はソロ2作目にあたります。

 Faces のファンだったという縁で Ronnie のバンドに参加し、流動的であったとされる当時の Ronnie のバンドにあっては主力の一人と言っていい存在だったようです。また、このアルバムにはやはり Ronnie のバンドのメンバーであった Susan Voelz がフィドルで参加しています( "Live In Austin" の一部の曲でも両人の演奏を聴くことができます。映画 "The Passing Show: The Life and Music of Ronnie Lane" の最後に Austin 時代の Ronnie が "Ooh La La" を歌う場面が収められていますが、時期的にみておそらくこの時のギターを担当しているのが Alejandro Escovedo で、フィドルが Susan Voelz だと思われます。確証はありませんが。)。

 Alejandro Escovedo の声はあくまで男臭くやるせなく。主流から外れ、風に吹かれて裏道を往く後ろ姿。そんな感じ。悪い意味ではなく。日本では無名に近いですし、アメリカでも大きな商業的成功は手にしていないようですが、こういうたたずまいがたまらん、という人は確実にいるでしょう。

 ギタージャカジャカのロックンロールもありますが、ストリングス、ハープ、ピアノなどを効果的に配した繊細な曲の方が印象に残ります。The True Believers が典型的なギターロックバンドだったことを考えると、ソロでのそうした変化は Ronnie の影響があるんじゃないでしょうか。Alejandro Escovedo 本人も、演奏活動を Ronnie と共にした経験がその後のソロ活動にも役立っていると発言しているそうですし。

 なお、1988年に Alejandro Escovedo は過度の飲酒のため Ronnie のバンドをクビになったとか。ヨッパライ・バンドで知られた Faces 出身の Ronnie から酒が理由でクビにされたことを、彼は「自分の音楽経歴の中でも特筆すべきできごとだ」と言っていたそうです。あのね・・・。

Summer Crashing

Summer Crashing
Susan Voelz (1995)

  "Thirteen Years" にも参加していた Austin 時代の Ronnie の仲間、Susan Voelz のソロアルバムです。

 Susan Voelz はアメリカ・ウィスコンシン州の生まれで大学を卒業してから音楽の道に進み、しばらく放浪生活を送った後移り住んだ Austin で Ronnie のバンドにフィドル(バイオリン)担当として参加したそうです。その後、ハワイのバンド Poi Dog Pondering の一員として活動したり、 John Mellencamp や Alejandro Escovedo 他多くのミュージシャンの作品に参加しており、驚いたことに日本のポストロックバンド MONO のアルバムのクレジットにも彼女の名前がありました。彼女のサイトには気に入っている参加作品として、Ronnie の "Live In Austin" と並んで MONO の "Hymn To The Immortal Wind" が挙げられていました。両者の音楽は相当かけ離れていると思うのですが・・・、いったいどういう人だ?

 彼女は1990年代にソロアルバムも2枚出していまして、本作はその2枚目の方。ボーカルとバイオリンの他にギター、ベース、ピアノも弾いています。収録曲もほとんどが彼女の作。多芸な人なのね。

 ここまで取り上げてきた作品からもわかるように Ronnie 関係だとフォーク・カントリー寄りというか、ルーツ・ロック系というか、そういう音楽性の人が多いのですが、彼女は珍しくオルタナティヴロック的です。バイオリンやチェロも効果的に使われていますが、あくまで基本はギターロックという印象。メロディも良くて駄曲が見当たりません。物憂げな色彩に包まれた音は派手ではありませんが程よくポップです。

 そして Faces の "Ooh La La" 収録の "Glad And Sorry"(もちろん、Ronnie の作)をカバーしてくれているのが嬉しい! 彼女の少し気だるい歌声とバイオリン・チェロの響きが曲に良く合っていて、なかなかの仕上がりです。これは好盤。

Conway's Corner

Conway's Corner
R.C. Banks (2001)

 Austin 時代の Ronnie のバンド仲間からもう1人、R.C. Banks です。Ronnie のバンドには1987年から参加していたようで、担当はアコーディオンやギター。 "Live In Austin" では彼の演奏が収録されているほか、彼の曲である "Under The April Skies" を Ronnie が歌っています。この曲は Ronnie のお気に入りだったらしく、Austin 時代の公演ではたいてい演奏していたとか(やはり確証はありませんが、前記の Alejandro Escovedo 、Susan Voelz 同様、映画 "The Passing Show: The Life and Music of Ronnie Lane" の "Ooh La La" の場面に彼らしき姿がほんのわずかですが見えます。舞台向かって右隅にアコーディオンと思われるものを手にしている人物が彼かと。)。

 R.C. Banks はご当地テキサス出身、彼の曲は Ronnie 以外にも Linda Ronstadt や Joe Ely にも取り上げられており、地元では人気のあるソロ・アーティストだそうです。このアルバムは4作目。ほんとうはオリジナルの "Under The April Skies" が収録されているのが欲しかったのですが、入手可能な作品はこれくらいしか見当たらなかったのでやむなく。

 しかし、なかなか良いアルバムじゃないですか!? 派手さはなく、あくまで渋く泥臭いんですが人懐っこい音で滋味豊か。フォーク、ブルース、カントリー、ケイジャンその他南部寄りゴッタ煮田舎料理風、ってとこでしょうか。ワルツ調の曲なんかもあったり。R.C. Banks の声はおっさんぽくて決して美声じゃありませんが、歌に表情があってわたしはけっこう好き。な~んか自然になごんでしまうな~。Ronnie が気に入るわけです。

Victory Gardens

Looking For A Sign
John & Mary (1991)

 こちらは渡米後に客演した作品になります。Ronnie は "We Have Nothing" という曲でバッキング・ボーカルを務めています。

 John & Mary は元 10,000 Maniacs の John Lombardo がバンド脱退後に Mary Ramsey と組んだグループで、これが1枚めのアルバム。ちなみに John Lombardo は看板ボーカリストだった Natalie Merchant が脱退した後の 10,000 Maniacs に Mary Ramsey を連れて復帰しています。

 ギターの音が妙に 10,000 Maniacs ぽくて「さすが元メンバーだなぁ」と思っていたら、10,000 Maniacs の Robert Buck が弾いているんですね。ぽいんじゃなくて、そのものだったという。ドラムも結局 10,000 Maniacs の Jerome Augustyniak で、裏 10,000 Maniacs 的作品だと思っていただければそう遠くはないんではないでしょうか。フォーク系オルタナティヴロックで、時折聴こえる Mary のヴァイオリン・ビオラを効果的。売れはしなかったようですが、質的には同時期の 10,000 Maniacs にも劣らぬ好作です。

 さて、John Lombardo も Mary Ramsey も主にニューヨーク州で活動していた人で、アメリカのちょうど反対側の Austin とは接点がなさそう。じゃあ本作のレコーディングが Austin だったのかというとそうでもない(カリフォルニアでした)。人脈からもつながりが見えず、ちょっと不思議な感じです。

 実は John Lombardo が Small Faces や Faces での Ronnie 作品の大ファンで、いっしょに仕事をする機会を願っていたそう。それでつてをあたって Ronnie のマネージャーに連絡を取り、参加の承諾を得たのだとか。病身の Ronnie はカリフォルニアには行かず、Austin のスタジオでの追加収録で歌ったとのことです。

 発病以前と比較するとずいぶんか細くなってしまいましたが、確かに聴こえます。Ronnie の声が。"We Have Nothing" は90年代らしいギターロックなんですが、Ronnie が歌うとなぜか郷愁につつまれてしまいます。それだけでもじんわりきます。皮肉屋の Ronnie は「おれたちは文無し」なんてコーラスを担当することになって、「まったくだ!」とおもしろがっていたのかもしれませんけどね!

 他にゲストとして元 Badfinger の Joey Molland も参加。

Looking For A Sign

Looking For A Sign
The Keepers (1995)

 The Keepers は Ronnie がアメリカ時代に住んでいた Austin のロック・バンドで、その中心人物 Brad Brobisky が Ronnie の友人でした。Brad Brobisky のホームページによれば、このバンドは元々 Brobisky が Ronnie との共作曲をレコーディングするために編成したスタジオ・バンドで、そのレコーディングが楽しかったのでそのままライブ活動もするようになったのだそう。このCDは彼らの最初のものです。

 Brad Brobisky のボーカルはちょっと Elvis Costello を思い出す感じですね。音的には割とオーソドックスなアメリカン・ロック風ですが、アコーディオンの参加が特徴的です。あー、誰かさんの好みが反映されているような(笑)。

 このアルバムの "King Of The Lazy World" と "The Boulevardier" が Brad Brobisky と Ronnie の共作曲。また "King Of The Lazy World" で Ronnie はバッキング・ボーカルを務めています。この曲は当初 Ronnie が自分のアルバム用に収録したものでリード・ボーカルもとっていたそうです。しかし、そのアルバムは完成させられないままになってしまっていたので、Ronnie の許可を得てリード・ボーカルを Brad Brobisky のものに差し替えたのがこれだそうです。その際、バッキング・ボーカルはそのままにしたのだとか。しかし残念ながら声が重ねてあるので Ronnie の声を判別するのは無理。もっと残念なのはこれが Ronnie 最後のスタジオ・レコーディングになってしまったことです・・・。

Spiritual Boy: An Appreciation Of Ronnie Lane

Spiritual Boy: An Appreciation Of Ronnie Lane
Ian McLagan & The Bump Band (2006)
  1. Spiritual Babe
  2. Itchycoo Park
  3. Nowhere To Run
  4. Annie
  5. Debris
  6. April Fool
  7. Kuschty Rye
  8. Show Me The Way
  9. You're So Rude
  10. Glad And Sorry
  11. Hello Old Friend

 Small Faces / Faces 時代を共にした Ronnie の親友 Ian McLagan から Ronnie ファンへの粋なプレゼント! なんと収録11曲中10曲が Ronnie 作(共作を含む)という Ronnie Lane トリビュート・アルバムです。

 冒頭 "Spiritual Babe" は意表をついてアメリカ時代の作から! 現在までに Ronnie 自身によるスタジオ録音バージョンは発表されていないだけに Mac がどう料理するか興味深いところですが、女性コーラスを配し気だる~く夜更けの雰囲気で迫ります。おおっ、これはアリだぞ、Mac 。

 続く "Itchycoo Park" では原曲のサイケ色が無い分、ゆったりと心安らぐフォーク調のメロディが前面に出てきて、こちらは朝のまどろみのよう。

 "You're So Rude" は・・・、あの~、イントロのピアノが Faces とまるっきり一緒なんですけど。まあ、いいか、弾いているの同一人物なんだし(笑)。

 唯一、Mac のオリジナルである "Hello Old Friend" は Ronnie のことを歌った曲で、The Bump Band 2000年発表のアルバム "Best Of British" にも収録されていました。

 どの曲も Ronnie 作品のメロディの良さが再確認できる納得の出来栄えで、さすが Mac はわかってます。といって原曲をそっくりなぞる工夫のないやり方ではなく、あくまで The Bump Band らしい正攻法のロックンロールで仕上げているところがとても気に入りました。Mac の鍵盤がたっぷり聴けるのも良かった。The Bump Band の前作、前々作と比べても鍵盤の活躍ぶりが印象に残ります。Ronnie Lane トリビュートとしてではなく、一枚のアルバムとして評価するとしても大好きです。

 もともと通販のみの作品だったので、未だに取り扱っているところがネット・実店舗ともに少なく、日本では入手しにくいのが難ですが、でも、Ronnie ファン、Mac ファンならがんばって買う価値のある作品です。わたしは Mac のサイト で買ってサイン入りのを送ってもらったぜ!(自慢)

 わたしが一番好きなのは "Annie" 。ポワポワした鍵盤の音に仕事の手をふと休めてお茶にしたくなるような、つつましくも暖かい歌です。

The Show Goes On: Songs Of Ronnie Lane

The Show Goes On: Songs Of Ronnie Lane
Slim Chance (2012)
  1. Kuschty Rye
  2. Flags & Banners
  3. Don't You Cry For Me
  4. One For The Road
  5. Lads Got Money
  6. Anymore For Anymore
  7. Rats Tails - Catmelody
  8. Silly Little Man
  9. Lost - From The Late To The Early
  10. You're So Rude

 2010年の暮のこと、かつてのメンバーが集まって Slim Chance が再結成されたというニュースには驚かされました。一時的なものかと思っていたらその後も活動は継続され、2012年にはなんと新録のアルバムが出るという事態に! うっひょぉー、スッゲー!

 それがコレです。本作における再結成 Slim Chance のメンバーは Steve Bingham(ベース)、Colin Davey(ドラム)、Alun Davies(ギター)、Charlie Hart(アコーディオン他)、Steve Simpson(ギター他)の5人。ゲストとして上記 Disorder On The Border のメンバーだった Geraint Watkins(オルガン他)も参加しています。

 全曲が Ronnie 作品の再演! 生前の Ronnie をよく知るメンバーだけに Slim Chance を名乗るにふさわしい音を出してくれています。丁寧に愛情をこめて、でもどこか一杯気分がただよっているのがうれしい。まさにパブロック?(笑)それとも粋な英国風カントリー?

 さて、Ronnie 不在の Slim Chance となれば、気になるのは誰が歌うのか、というところ。Ronnie 独特の個性を出すのは誰であっても難しく、それもあってか本作ではリードボーカルの担当者を固定せず分担しています。これは吉と出たようで曲ごとにうまく変化がつき、リーダーがいない寂しさをよく埋めています。

 Ronnie と彼ら Slim Chance の面々が活動を共にしていた時代からは早30年以上が過ぎ、このCDのブックレットの写真に写るメンバーたちも相応に老けました(笑)が、演奏にはむしろ齢を重ねたことで出せるようになった味わいのようなものを感じます。元々 Slim Chance の音楽は若者専用というようなものじゃなかったですしね。それに聴く前に想像していたよりはるかに彼ら、元気です(笑)。

 「ショーは続いてる」だって、Ronnie さん!

 好盤です。