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RONNIE LANE

6. Faces

 Small Faces に続きましては Faces です。

 わたしが思うに、これくらいロック・バンドらしいバンド、典型的なロック・バンドもそうそうないのではないでしょうか。

 女ったらしで気まぐれだけど本気になればほとんど無敵状態なボーカル、上手いんだか下手なんだか定かではないがとにかくノリは抜群のギター、地味なようでいて実はしっかり自己主張している鍵盤、ひたすらバンドの屋台骨を支えるリズム組、と、まあ見事に揃ったもんです。

 「史上最強のB級バンド」とか「イッツ・オンリー・ロックンロール・バンド」とかいった形容がお似合いなのも、またよし。

First Step

First Step
Faces (1970)
  1. Wicked Messenger
  2. Devotion
  3. Shake, Shudder
  4. Stone
  5. Around The Plynth
  6. Flying
  7. Pineapple And The Monkey
  8. Nobody Knows
  9. Looking Out The Window
  10. Three Button Hand Me Down

 わたしが持っているCDではアルバム・ジャケットのバンド名はちゃんと Faces になっていますが、 ものによっては Small Faces のままになっているものもあり。

 Steve Marriott がバンドを去った後、Rod Stewart と Ron Wood を迎え入れて制作された新生 Faces 最初のアルバムです。Ron Wood によれば、彼の方から Ronnie に電話をして一緒にやろうと持ちかけたんだとか。The Jeff Beck Group 時代のベース担当から正ギタリストになれたのがよっぽどうれしかったのか、弾きまくってますね、彼は。

 それにしても音の方は Immediate 時代の Small Faces の小粋でカラフルな雰囲気から一変、いきなりドヨーンと泥臭い二日酔いノリになりました。ううむ、Faces は第2期 Small Faces という感じではなく、やはり別のバンドと考えた方がいいように思います。バンド名もはっきりと変えた方がよかったのでは?

 正直言ってアルバムとしてのまとまりは今一つ。曲単位でももうちょっと絞ればもっと良くなった、という感じのがいくつもあります。呑んだ勢いでダーッと演っちゃった、みたいなね。それが彼らの持ち味でもありますが。

 "Stone" はもちろん "Ronnie Lane's Slim Chance" 収録曲と同じもの(題は違いますが、 Pete Townshend のソロ・アルバムに収録されている "Evolution" も同じ曲です )。よっぽどお気に入りだったのか、それともここでの出来に満足できなかったから?

 Ronnie・Rod・Ron 3人の共作 "Flying" がこのアルバムの個人的ベスト曲。まさに天を目指すが如き豪放な Rod の歌は、さすがスーパースター。

Long Player

Long Player
Faces (1971)
  1. Bad 'N' Ruin
  2. Tell Everyone
  3. Sweet Lady Mary
  4. Richmond
  5. Maybe I'm Amazed
  6. Had Me A Real Good Time
  7. On The Beach
  8. I Feel So Good
  9. Jerusalem

 Faces としては2作目で、"Maybe I'm Amazed" と "I Feel So Good" のみライブ。

 お若い方はピンと来ないかもしれませんが、"Long Player" って、つまりLPレコードのことです。・・・、そのまんまじゃん。この安直さも彼らの持ち味、といえば、まあ、そうでしょうね・・・。

 絞りきれていない感は残るものの、全体的に楽曲の魅力は前作よりグッと増しているように思います。

 "Tell Everyone" は "Anymore For Anymore" で再演されているRonnie の曲です。しかし、ここでは Rod がボーカルということもありますが、雰囲気が全然違います。黙って聴かされたら同じ曲だと気がつかないかも。これはこれで良いと思いますが、わたしはやっぱり Slim Chance バージョンが好き。

 "Richmond" も Ronnie 作で、こちらは後の "Mahoney's Last Stand" につながっていくような佳曲で、ギターの音色が印象的。Ron Wood はこのアルバムでも弾きまくってますが、この人のギターってどっかひょうきんですよね。演奏に性格が出てしまっているのだろうか。

 そんな Ron と Ronnie が共作したのが "On The Beach" 。そのあまりにもお気楽な響きがまぶしい。

 ライブの "Maybe I'm Amazed" は意外にも Paul McCartney のカバー。出だしを Ronnie が歌ってその後を Rod が引き継ぐっていうのがいいなぁ。レコーディング・データを見ると、これを含めた4曲の収録にモバイル・レコーディング・ユニットを使ったとあります。Slim Chance 時代に L.M.S. を使うようになったのは、これがきっかけ?

A Nod Is As Good As A Wink... To A Blind Horse

A Nod Is As Good As A Wink... To A Blind Horse
Faces (1971)
  1. Miss Judy's Farm
  2. You're So Rude
  3. Love Lives Here
  4. Last Orders Please
  5. Stay With Me
  6. Debris
  7. Memphis, Tennessee
  8. Too Bad
  9. That's All You Need

 3作目にして Faces 最高作としばしば評されるのがコレ。

 一般的には彼らの代表的なヒット曲 "Stay With Me" が収録されていることと「馬の耳に念仏」というとんでもねー邦題(しかし意味的にはそれであっているらしい・・・)で知られている本作ですが、Ronnie ファンにとっては Ronnie の全作品中指折りの名曲 "Debris" に尽きます。Ronnie 亡き今、「涙無しには聴けん!」というオールド・ファンもいらっしゃるでしょう。夕空の下、帰り道を急いだ子どもの頃を思い出すようなメロディ、ギター、鍵盤・・・、いかん、こっちも涙腺がゆるんできた・・・。

 Ian Mclagan と共作の "You're So Rude" は Ronnie の別の一面、おトボケおマヌケ路線の曲。英語がわからなくても、「しょうもないこと歌ってんな」とすぐわかるところが素敵。

 "Last Orders Please" は "Kuschty Rye" に収録されている "Well, Well Hello (The Party)" と同じ曲。Faces バージョンはどれも Slim Chance バージョンより元気がいいですな。

 "Love Lives Here" は Ronnie・Rod・Ron 3人の共作。Rod と Ron の放蕩息子コンビに Ronnie が加わると不可避的に曲調がしみじみとしてきます。Rod と Ron の二人だけの作品 "Miss Judy's Farm" とか "Stay With Me" とか "Too Bad" とかの「ヨッパライ大暴れ」ノリと比べるとその差がクッキリ。

 特別なことをしているわけではないけれど、出だしから最終曲までロックの楽しさが存分に味わえる快作。神棚に供えてから聴かにゃならんような名作・傑作ではないところが、彼ららしくていいじゃないですか。

 えっ、Ron Wood ? 相変わらずです。

Ooh La La

Ooh La La
Faces (1973)
  1. Silicone Grown
  2. Cindy Incidentally
  3. Flags And Banners
  4. My Fault
  5. Borstal Boys
  6. Fly In The Ointment
  7. If I'm On The Late Side
  8. Glad And Sorry
  9. Just Another Honky
  10. Ooh La La

 Ronnie 在籍時のアルバムとしては最後のものとなってしまった第4作です。当時全英1位を獲得する大ヒットにはなったものの、前作の勢いに欠け、バンドとしての一体感も今ひとつという気がします。心なしか、Ron Wood のギターもちょっと元気が無いし・・・。

 "Flags And Banners" は Ronnie と Rod の共作で、歌っているのは Ronnie 。普段と違い、少しキツそうに声を張り上げているのが気になります。ホントは Rod が歌う予定だったんじゃ?(根拠はありませんが)

 "Fly In The Ointment" 以降はLPレコードでのB面に当たりますが、Ronnie はそのすべての作曲に参加しています。しんみりと寂しさ漂う "Glad And Sorry" のボーカルは Ronnie と Ron という珍しい組み合わせです。

 アルバムタイトルにもなった Ronnie と Ron の共作 "Ooh La La" が、やはりここでのベストでしょうか。ついつい踊りだしたくなるような素敵な演奏に乗って、「女はズリィよな」ってな感じの Ronnie 的ぼやきユーモアあふれる歌詞を Ron がやけくそにシロートくさい歌で聴かせるというところがもう、サイコーです(実は Rod が歌うのを拒否したので Ron にお鉢が回ってきた、ということらしいのですが)。

 長期にわたるコンサート・ツアーに疲れ、純粋に自分が作りたい音楽を実現させる場を求めていた Ronnie は、本作発表の数ヶ月後に Faces を脱退してしまいます。

 Faces 自体はその後も1975年まで存続しており、Ronnie 脱退後のアルバムとしてはライブの "Coast To Coast: Overture And Beginners" がありますが、わたしは「 Ronnie がいないんじゃね」ってことで聴いていません。従って、ここでは割愛。

Five Guys Walk Into A Bar...

Five Guys Walk Into A Bar...
Faces (2004)

<Disc 1>

  1. Flying
  2. On The Beach
  3. Too Bad
  4. If I'm On The Late Side
  5. Debris
  6. Jealous Guy <Outtake>
  7. Evil <Rehearsal>
  8. As Long As You Tell Him <Single>
  9. Maggie May <Live>
  10. Cindy Incidentally <Alternate Mix>
  11. Maybe I'm Amazed <Live>
  12. Insurance <Outtake>
  13. I Came Looking For You <Rehearsal>
  14. Last Orders Please
  15. Wyndlesham Bay (Jodie) <Outtake>
  16. I Can Feel The Fire <Live>
  17. Tonight's Number
  18. Come See Me Baby (The Cheater) <Outtake>

<Disc 2>

  1. Pool Hall Richard
  2. You're My Girl (I Don't Want To Discuss It) <Live>
  3. Glad And Sorry
  4. Shake, Shudder, Shiver <Rehearsal>
  5. Miss Judy's Farm <Live>
  6. Richmond
  7. That's All You Need
  8. Rear Wheel Skid <Single>
  9. Maybe I'm Amazed <Single>
  10. (If Loving You Is Wrong) I Don't Want To Be Right <Outtake>
  11. Take A Look At The Guy <Live>
  12. Flags And Banners
  13. Bad 'N' Ruin <Live>
  14. Around The Plynth
  15. Sweet Lady Mary
  16. Had Me A Real Good Time
  17. Cut Across Shorty <Live>

<Disc 3>

  1. You're So Rude
  2. (I Know) I'm Losing You <Live>
  3. Love Lives Here
  4. I'd Rather Go Blind <Live>
  5. Hi-Heel Sneakers / Everybody Needs Somebody To Love <From The Last Sessions>
  6. Gettin' Hungry <From The Last Sessions>
  7. Silicone Grown
  8. Oh Lord I'm Browned Off <Single>
  9. Just Another Honky
  10. Open To Ideas <From The Last Sessions>
  11. Skewiff (Mend The Fuse) <Single>
  12. Too Bad <Live>
  13. Rock Me <From The Last Sessions>
  14. Angel <Live>
  15. Stay With Me <Live>
  16. Ooh la la

<Disc 4>

  1. The Stealer <Live>
  2. Around The Plynth / Gasoline Alley <Live>
  3. You Can Make Me Dance, Sing Or Anything (Even Take The Dog For A Walk, Mend A Fuse, Fold Away The Ironing Board, or Any Other Domestic Short Comings) <Single>
  4. I Wish It Would Rain <Live>
  5. Miss Judy's Farm <Live>
  6. Love In Vain <Live>
  7. My Fault <Live>
  8. I Feel So Good <Rehearsal>
  9. Miss Judy's Farm
  10. Three Button Hand Me Down
  11. Cindy Incidentally
  12. Borstal Boys
  13. Flying <Live>
  14. Bad 'N' Ruin
  15. Dishevelment Blues <Single>
  16. Stay With Me

 Small Faces とは対照的に、オリジナルアルバム以外の編集盤とかはあまり出ていなかった Faces ですが、バンド解散から30年近くを経てその空白を一挙に埋めるが如きボリュームのCDボックスセットが出ました。代表曲に加えて、リハーサル、ライブ、アウトテイク、シングルB面曲などのオリジナルアルバム未収録曲をてんこ盛りにしたCD4枚組。

 一見して収録曲順に脈絡がないように思われますが、選曲を担当した Ian Mclagan は「最初はよくあるように時系列順にしようかと思ったんだけど、聴いてみたらまるで電話帳を読んでいるみたいでおもしろくなかった」ので、自分の聴きたい順番に並べてみたのだそう。これには賛否両論あるでしょうが、わたしはこれでよかったと思います。Mac の言うとおり、カッチリ整理された構成にしておもしろいバンドだとは思えません。

 注目はやはりオリジナルアルバム未収録曲ということになりますが、中でもカバー曲がなかなか。disk 1 "Jealous Guy" は原曲にあった John Lennon 特有の危うい情緒不安定さが見事に消え失せ、単なるヨッパライの嘆き節になっているところがさすが Faces と、もうこれは褒めるより他ありません。disk 3 "(I Know) I'm Losing You" では Kenney Jones のドラム・ソロが爆走するぞっ! disk 2 "(If Loving You Is Wrong) I Don't Want To Be Right" の渋く抑えたカッコよさには呆然。こういうのもできるんだぁ・・・。何でこういうの、もっと演らなかったんだ? この曲は Rod がソロ・アルバムでもカバーしているというので聴き比べてみましたが、わたしはやっぱり Faces バージョンに軍配を上げます。荒削りなんですが情感がより深く伝わってきます。ベースの比較なんかシロートのわたしは普段なかなかしませんが、こうして同じ曲で聴き比べてみると Ronnie の歌うような弾きっぷりはいいですね。これも Faces の勝ち。贔屓の引き倒し? いいじゃん、ここはそういうサイトです。disk 4 "Dishevelment Blues" は Mac 曰く「冗談」だそうです・・・。ええ、わたしの耳にも冗談に聴こえます。雑誌付録のソノシートに新曲をと依頼されて、「ンなもン、マジメにやってられっかぁ~!」とばかりにやっつけたのがコレなんだとか。「やってやったぜぇ」と言いたげに Rod は高笑い。ライブ曲なら disk 4 "Flying" が一番かな。

 もちろん、Ron Wood はCD4枚、終始にわたって弾きまくっています。

 Ronnie ファンにとって最も重要なのが disk 1 "I Came Looking For You" 。これは1971年、ニューオーリンズのホテルで Ronnie と Mac 二人だけで録音したものだそう。Mac はこの曲はこの時初めてだったそうで、彼のエレクトリック・ピアノが Ronnie のギターとほぼ同じメロディをなぞっているところからもそれがうかがえます。いかにも Ronnie らしい、ホッとする心地の曲です。途中で Ronnie がクスクス笑ってる・・・。この曲の収録はこれっきりで、後でメロディを生かして歌詞を差し替えたのが続く disk 1 "Last Orders Please" なのだそう。雰囲気はむしろ Slim Chance 時代のバージョン "Well, Well Hello (The Party)"( "Kuschty Rye" 収録)に近いのがおもしろいところです。

 ブックレットも写真タップリの60ページ。もっとも "Mahoney's Last Stand" の曲に Rod Stewart や Ron Wood のソロの曲のライブ演奏までサービスしてくれたおかげで権利関係がややこしくなり、ために日本盤は発売されないことになってしまったようで、せっかくのブックレットも日本語訳がないという辛い状況に・・・。加えて輸入盤しかないのでやや入手しにくくなったのは残念です。しかし、それを割り引いても Faces ファンは必携でしょう。

 深遠さより楽しさ、良くも悪くもロックンロール、イカレポンチなれど憎めぬ奴ら、Faces 。がんばって買ってください。

The Best Of Faces : Good Boys... When They're Asleep...

The Best Of Faces : Good Boys... When They're Asleep...
Faces (1999)
  1. Flying
  2. Three Button Hand Me Down
  3. Wicked Messenger
  4. Sweet Lady Mary
  5. Bad 'N' Ruin
  6. Had Me A Real Good Time
  7. Debris
  8. Miss Judy's Farm
  9. You're So Rude
  10. Too Bad
  11. Love Lives Here
  12. Stay With Me
  13. Cindy Incidentally
  14. Glad And Sorry
  15. Borstal Boys
  16. Ooh la la
  17. Pool Hall Richard
  18. You Can Make Me Dance, Sing Or Anything
  19. Open To Ideas

 入門者向けに手持ちのベスト盤を1枚、ご紹介。選曲は Mac が担当。19曲入り。妥当な内容だと思います。タイトルがシャレてますね。「良い奴らだ・・・、寝ている時は・・・」ってね。

 他にもいくつか Faces のベスト盤は出ているみたいで、本作にこだわる必要はないですが、少なくとも Ronnie に関心がある方は "Snakes And Ladders" は避けた方が無難です。

 1970年代からあるベスト盤で近年紙ジャケで再発売もされていますが、曲数が少ない上に Ronnie がリード・ボーカルをとる曲が一つもない! "Debris" が入ってない Faces のベスト盤なんて、ベストじゃねぇ!(怒)

A Real Good Time : Transmissions 1970

A Real Good Time : Transmissions 1970
Faces (2021)
  1. Shake, Shudder, Shiver
  2. Pineapple And The Monkey
  3. Three Button Hand Me Down
  4. Wicked Messenger
  5. You're My Girl (I Don't Want To Discuss It)
  6. Wicked Messenger
  7. Devotion
  8. It's All Over Now
  9. I Feel So Good
  10. Had Me A Real Good Time
  11. Country Comfort
  12. Away In A Manger/God Rest Ye Merry Gentlemen/Good King Wenceslas/ O Come All Ye Faithful/Silent Night

 どういう経緯かは不明ですが、2021年に Faces の音源が続けて世に出ましたので、それぞれご紹介。

 こちらは1970年に、事前収録の上、英国 BBC ラジオの番組で放送された曲を集めたものです。音質はまともだと思います。

 CDに記載されたデータによりますと、1 と 2 は3月9日にロンドンにある BBC のラジオ放送用のスタジオ Paris Cinema ( The Beatles など他の有名バンドもここで収録しています。Paris Theatre 、Paris Studios とも)で収録され、3月28日に Top Gear で放送されました。

 3 と 4 は3月10日に(連日お仕事だったのね)同じくロンドンにありますが別の BBC のスタジオ Camden Theatre で収録され、3月15日に Dave Lee Travis Show で放送。

 5 〜 9 は6月25日に Paris Cinema で収録され、7月5日に John Peel 's Sunday Concert で放送。

 10 と 11 は9月15日にロンドンのまた別の BBC のスタジオ Maida Vale Studio#4 で収録され、9月19日に Top Gear で放送。

 12 はどうやらクリスマス企画だったらしく、The Top Gear Carol Singers というグループ名義になっていて、12月8日に収録され(収録場所の記載はありませんでしたが、 John Peel Wiki によりますと、Maida Vale Studio#4 とのこと。)、12月26日に放送。

 1 〜 4 はちょうど First Step 発売前後のことでしたから、そのプロモーションではないかと推測されます。

 5 〜 9 はスタジオライブのようで、観客を入れているらしく拍手や声が聴こえます。

 演奏は初期のアルバムの感じと同様ですね。このころの Faces は特にユルいというか、ダラッとしているというか。時代がそういう雰囲気であったっていうのもあるだろうし、これも味なんですけど、もちょっとメリハリつけてほしいな。1本のライブを丸ごと収録したものではなく、バラバラの音源を集めたものですから、余計そう感じるのかも。

 Ronnie 贔屓としてはベース演奏はともかく、歌で出番がほとんどなく、残念。Faces としてはコーラスと 7 でほんの少し聴けるだけ。

 このCDの目玉はむしろ Faces としてではない 12 かもしれません。The Top Gear Carol Singers のメンバーは Faces 全員に加えて、Marc Bolan(!)、Sonja Kristina(Curved Air)、Robert Wyatt(!)らが参加しています。1曲めは Rod がソロで歌っています。クリスマスキャロルも似合うんですね、さすが。注目は3曲め。独唱部分を Ronnie と Robert Wyatt が交互に歌っています! ちょっぴりおどけた感じがらしいです。

London '71

London '71
Faces (2021)
  1. Three Button Hand Me Down
  2. Maybe I'm Amazed
  3. Too Much Woman (For A Henpecked Man)
  4. Street Fighting Man
  5. Too Much Woman (For A Henpecked Man) - Reprise
  6. Miss Judy's Farm
  7. Love In Vain
  8. Stay With Me
  9. (I Know) I'm Losing You

 こちらは1971年10月26日に、Paris Theatre で BBC のテレビ番組 "Sounds For Saturday" 用に収録されたもの。放送は1972年4月1日だったそうです。テレビ番組って、映像あるならDVD出してよ、DVD・・・。 YouTube で観られるけどさ。音質はこちらもまずまず。

 時期的にはこの年の2月に Long Player が出て、それから英米欧州をツアーで巡って、合間にレコーディングして A Nod Is As Good As A Wink... To A Blind Horse 発表直前ってとこ。"Miss Judy's Farm" 、"Stay With Me" お披露目ですね。

 イントロ、Ronnie のベースから!

 これはいいですね。「上手くなった」というのとは違いますが、ノリのよさはそのままに、「聴かせる」演奏力がついてきたというか。

 しかし、Ronnie の歌の出番の少なさは A Real Good Time : Transmissions 1970 と変わらず、"Maybe I'm Amazed" の頭くらい。残念。

 通常のコンサートを収録したのではなく、テレビ番組用という関係でしかたないのですが、曲数が少ないのも物足りません。この時の "Maybe I'm Amazed" 、"Miss Judy's Farm" 、"Stay With Me" 、"(I Know) I'm Losing You" は Five Guys Walk Into A Bar... に収録済みだしねえ・・・。贅沢言ってはいけませんけど。

London '73

London '73
Faces (2021)
  1. Silicone Grown
  2. Cindy Incidentally
  3. Angel
  4. Memphis, Tennessee
  5. True Blue
  6. I'd Rather Go Blind
  7. You're My Girl (I Don't Want to Discuss It)
  8. Twistin' The Night
  9. It's All Over Now
  10. Miss Judy's Farm
  11. Maybe I'm Amazed
  12. Three Button Hand Me Down
  13. (I Know) I'm Losing You

 1973年2月8日に、Paris Theatre で BBC のラジオ番組 "In Concert" 用に収録されたもの。音質はよくないです。低音がつぶれ、ブツブツと全体的に不安定。前2作よりかなり落ちます。演奏自体はいい感じだし、 London '71 より曲数も多いんですが、ちょっともったいない。

 こちらは同年4月の Ooh La La を控えてのツアー初日にプロモーションを兼ねたものだったそうです。頭2曲は新作からの紹介ってことですね。

 しかし、全13曲中、半分以上の7曲が Rod のソロ作の収録曲っていうのは・・・。バンドのバランスが崩れてきていたことが露呈してしまっています。

 やはり Ronnie の歌の出番は "Maybe I'm Amazed" だけ。作曲で関与しているのも収録ゼロという状態ですから、彼が不満をためこむのも無理ないのでは?

 前2作も本作も BBC の音源ですが、Faces は BBC の著名 DJ・John Peel のお気に入りバンドだったそうで、かなり優遇されていたとのこと。その John Peel は「パーティー・ロックのノリに水をさすという理由で、バンドは Ronnie Lane にステージで歌うことを許さなかった」と言っています。そして、それは「誤り」だったとも。

 Faces はもともとレコードではなく、ライブで人気者となったバンドです。その「パーティー・ロックのノリ」は十分に味わえます。しかし、それだけのバンドではなかったはずです・・・。