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RONNIE LANE

1. Slim Chance & Solo

 Ronnie Lane が遺したオリジナルのソロ・アルバムは、わずかに4枚だけ。 多発性硬化症 という難病のために活動が困難になってしまったからです(悲)。

 しかし、いずれも素敵な出来ですので、できるだけ多くの方に Ronnie の rock'n'folk あるいは British Country な音楽を聴いてもらえればと願っています。

Anymore For Anymore

Anymore For Anymore
Ronnie Lane With The Band Slim Chance (1974)
  1. Careless Love
  2. Don't You Cry For Me
  3. (Bye & Bye) Gonna See The King
  4. Silk Stockings
  5. The Poacher
  6. Roll On Babe
  7. Tell Everyone
  8. Amelia Earhardt's Last Flight
  9. Anymore For Anymore
  10. Only A Bird In A Gilded Cage
  11. Chicken Wired

 1970年代前半の大人気ロック・バンドだった Faces を辞めて、新たに結成したバンド Slim Chance とともに作った記念すべき第1作!!

 元 McGuinness Flint の Benny Gallagher(ギター他)と Graham Lyle(ギター他)や元 The Grease Band の Bruce Rowland(ドラム)が参加し、Faces のマネージャーだった Billy Gaff が設立した GM Records から発売されています。

 "Tell Everyone" はもともと Faces のアルバム "Long Player" の収録曲だったのですが、再演で明らかに変化したその曲調が Faces を脱退してでも Ronnie がやりたかったことを物語っているようです。 "Long Player" の時にボーカルを担当したのは Rod Stewart ですが、その Rod が「 Ronnie が書くこういう情感にあふれた曲は、Ronnie 本人以外の誰にとっても歌うのは難しい」と言っていたとか(苦手だった? Rod?)。

 またアルバム名にもなった "Anymore For Anymore" も、Faces 時代にすでにリハーサルでは演奏されていたのにもかかわらず、結局発表されずじまいだった曲です。良い曲なのに、もったいない。

 Ronnie の全作品に共通して言えることですが、「年齢に関係なく楽しめるものを」と音楽に向かった Ronnie の、手作りの親しみやすさがこのアルバムでも魅力的です。そのまんま「明るい農村でダンス」のノリの "Careless Love" や "(Bye & Bye) Gonna See The King" 、クラシックな管弦の響きも美しい本人曰く「自分の最高傑作」の "The Poacher" 、古き良きアメリカをイメージしたかのような "Amelia Earhardt's Last Flight" 、 Ronnie 流牧歌ロマンティック・バラードの "Roll On Babe" や "Anymore For Anymore" など、素敵な歌がたくさん収められています。

 ウェールズの農村に移り住み、農場を営みながら取り組んだこの1作目から Ronnie の持味が存分に楽しめます。

Ronnie Lane's Slim Chance

Ronnie Lane's Slim Chance
Ronnie Lane's Slim Chance (1975)
  1. Little Piece Of Nothing
  2. Stone
  3. Bottle Of Brandy
  4. Street Gang
  5. Anniversary
  6. I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter
  7. I'm Just A Country Boy
  8. Ain't No Lady
  9. Blue Monday
  10. Give Me A Penny
  11. You Never Can Tell
  12. Tin And Tambourine
  13. Single Saddle

 Slim Chance 名義の2作目。ただし、Ronnie 以外のメンバーは大幅に入れ替わっています。 "See Me" まで Ronnie を支え続ける Steve Simpson(ギター他)、Charlie Hart(ピアノ他)、それに Brian Belshaw(ベース)の3人はここから参加です。また、本作は Island Records から発売されています。

 ふと、おじいさんの昔話とでも形容したくなる "Little Piece Of Nothing" で始まる本作は、全体の感触は前作に通じておりメンバー交代を感じさせない仕上がりですが、"Bottle Of Brandy" とか "Blue Monday" とか、どうもヨッパライ度が若干上がっているような気がするのは私だけでしょうか・・・。なんせこの人、本をただせば「アルコール消費量世界一のキャバレー・バンド」Faces の出身ですし・・・(笑)。

 そう言えば "Stone" はまたも Faces 時代の曲( "First Step" 収録)の再演です。Faces のがさつな雰囲気(それはそれで好きですが)が消えてさりげない繊細さを忍び込ませるところが Ronnie 風。わかりにくいのですが "Tin And Tambourine" も "First Step" 収録曲 "Devotion" の改作です。歌詞は違いますがメロディが一部共通しています。

 本作はカバーが多いのが特徴で、カントリーらしき "Bottle Of Brandy" 、戦前のジャズ曲(!)の "I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter" 、 Harry Belafonte が歌い Sam Cooke もカバーした "I'm Just A Country Boy" 、 Fats Domino の "Blue Monday" 、定番 Chuck Berry (やっぱりこの世代の人には欠かせないワケね・笑)の "You Never Can Tell" 、ブルーグラス・バンドの The Dillards が元ネタと思われる "Single Saddle" と計6曲。選曲に彼のアメリカ音楽への憧憬を感じさせます。

 一方、Ronnie の自作曲はといえば、"Give Me A Penny" は軽快なのになぜかちょっとホロリとさせる Ronnie 節で私の大好きな曲。そうかと思えばインストゥルメンタルの "Street Gang" はいきなり南国ムードだったりして、地味にバラエティに富んでいるところがまた Ronnie らしくもあります。

One For The Road

One For The Road
Ronnie Lane's Slim Chance (1976)
  1. Don't Try'n' Change My Mind
  2. 32nd Street
  3. Snake
  4. Burnin' Summer
  5. One For The Road
  6. Steppin' An' Reelin' (The Wedding)
  7. Harvest Home
  8. Nobody's Listenin'
  9. G' Morning

 3作目はカバーが多かった前作からは一転、全曲 Ronnie 作(共作1曲を含む)となりましたが、音楽的にはそれまでの流れを受け継いだものになっています。

 なんでもイギリス人の田園に対する想いというのは、出身階層にかかわらず特別なものがあるのだそうで、元々は都会っ子(生まれも育ちも London)だった Ronnie の音楽の志向、そして農村への移住という行動はそのへんが関係しているのでしょうか。

 当時は毎日トラクター、運転してたそうですけど、ジャケットの写真の格好を見る限りメチャメチャ似合いそう。Small Faces 時代のビシッときめたスーツ姿からは想像もできないたたずまいで、「ホントに元モッズ?」と訊きたくなってしまいます。

 この頃の話ですが、地元のパブで演奏することになった Ronnie さん、馬車でお出かけ(!)、着いてみれば口コミでお客さんが500人も集まっちゃっていて店に入りきらず、駐車場にまであふれかえる状態だったとか。のどかですなぁ。

 それにしても農場経営というのは楽しそうに見えても実際には苦労が多かったはずで、深刻で悲痛な響きが印象的な "Burnin' Summer" は Ronnie の農場が大寒波に見舞われたことを歌っています。しかし、続くタイトル曲 "One For The Road" ではすぐに気を取り直して元気よく、インストゥルメンタルの "Harvest Home" は Ronnie が夢見た暮らしを音にしたような世界。ぜひ聴いてほしい曲の一つです。

 本作も Island Records からの発売。

 ジャケットの写真には、Ronnie の他、当時の Slim Chance のメンバー(向かって左から Charlie Hart 、ドラムの Colin Davy 、Ronnie 、Steve Simpson 、Brian Belshaw )の姿が。本作は基本的にこの5人で制作されたようです。なお、Charlie Hart 、Colin Davy 、Steve Simpson の3人は 再結成 Slim Chance のメンバーでもあります。

 Slim Chance のメンバーの後ろに写っているのが Ronnie 愛用の移動録音スタジオ L.M.S. です。このページの4作品すべてのレコーディングに使われました。

See Me

See Me
Ronnie Lane (1980)
  1. One Step
  2. Good Ol' Boys Boogie
  3. Lad's Got Money
  4. She's Leaving
  5. Barcelona
  6. Kuschty Rye
  7. Don't Tell Me Now
  8. You're So Right
  9. Only You
  10. Winning With Women
  11. Way Up Yonder

 実はこの作品の前に "Self Tapper" というアルバムを作る計画があり、1977年にはレコーディングが始まっていたのですが、この頃に Ronnie は難病・多発性硬化症に襲われ、制作は中止となってしまいます( "Self Tapper" はほぼ完成していたのだけど、契約してくれるレコード会社がなかったともいわれています)。衝撃を受けた Ronnie は Slim Chance を解散してしまい(本作が Ronnie Lane 単独の名義となっているのはそのためのようです)、一時は農場経営に専念するつもりになっていたということです。

 しかし、悪い事は重なるもので、1978~79年にかけての冬にはまたも寒波で家畜の多くを失い、結局農場をたたまざる得なくなってしまったそうです(悲)。

 このアルバムはそんな中、再起を目指し、元 Slim Chance のメンバーを含む多くの仲間たちの力を借りて制作された作品です。本人は本作がお気に入りで、「このアルバムが一番良い出来だ」といっていたのだそうです。

 「一歩、二歩、三歩、進んでいくんだ、四歩、五歩、扉の外に出て・・・」と歌う "One Step" は、立ち直ろうとする当時の Ronnie の心境でしょう。

 "Only You" と "Winning With Women" はもともと "Self Tapper" のために用意された曲。

 アコーディオンが印象的な "Kuschty Rye" は彼がこの頃、特に関心を持っていると語っていたケイジャン音楽の影響でしょうか。"Kuschty Rye" って意味不明な言葉ですが、これはロマ語で「良き紳士」を意味するそうです( Ronnie にはロマの友人がいたらしい)。

 Eric Clapton 参加の "Barcelona" はこのアルバムの白眉。のどかで郷愁を誘うメロディはやっぱり素敵。

 当時、RCA Records 傘下の GEM Records という小さなレーベルから発売されましたが、このころはなにせパンク・ニューウェイブの全盛期で、そんな中で Slim Chance の発展形を目指した本作は言うまでもなく商業的には成功しませんでした(前3作だって成功したとは言いがたいのですが)。そして結局、これが生前に発売された最後のオリジナル・アルバムになってしまいました・・・。

 Steve Simpson 、Charlie Hart 、Brian Belshaw 、Bruce Rowland の他、Alun Davies(ギター・"One Step" と "She's Leaving" の共作者で 再結成 Slim Chance にも参加)や元 The Grease Band の Henry McCullough(ギター)と Chrissy Stewart(ベース)らが参加しています。

 また、本作発表とほぼ同時期のライブ作品として Rocket 69Live At Rockpalast 1980 があります。