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開店休業の記

今日の音楽 ー 実はお久しぶり

The Record

 今回は新規開拓かつテキサス州オースティンのラジオ局 KUTX のネット放送で、収録曲がよくかかっていて、気に入ったパターンです。Soccer Mommy なんかと同じ。

 アメリカの女性3人組・Boygenius 2023年のアルバム第1作 "The Record" です。元々ソロで活動していた Lucy Dacus 、Phoebe Bridgers 、Julien Baker は、互いの作品のファンであったことから友人となり、それがこのグループ結成につながったということです。最近、そういうの、時々ありますね。I'm With Her もそんな感じだったし。

 おや、Julien Baker って聴いたことあるぞ。もう6年も前だけど、ここで取り上げたことがありました。

 音はややフォークよりの現代ロックという感じ。元々全員ソロだったというのが意外に思えるくらい、グループとして自然にまとまっています。曲の中でリード・ボーカルが交替したりするところとか、コーラスの部分とか、良い効果が感じられます。3人それぞれ、少しづつ声質、歌い方が違うんですが、いっしょに歌って相性がいい感じ。それも幸いしたかな?

 "$20" で激発してんのは Julien Baker だろうか? この人、ソロでも時々そうだったし。

 一番気に入ったのは、アメリカでヒットした "Not Strong Enough" 。比較的落ち着いた雰囲気の曲が多い中、力の入ったオルタナ・ロック的な曲で、ここは一つ外界に向けて派手めにかましてみましたってな感じ、スタジアム級の大会場でも似合いそう。アルバムの中でもいいアクセントになっています。

 ジャケットに 'Thanks to Paul Simon for inspiration on "Cool About It"' ってありますが、このアコースティック・ギターの感触は確かに Paul Simon ぽい。

 良い作品です。次作もあるかな?

今日の音楽 ー パブ・ロックかどうかはともかく

The Essential Thin Lizzy

 だいぶ間が空きましたが、またパブ・ロックのコンピレーション "Surrender To The Rhythm" 収録アーティストから、気になった人たちシリーズです。

 今回は Thin Lizzy 。Mott The Hoople 同様「この人たちってパブ・ロックなの?」という疑問もあるのですが。パブ回りもしてたらしいけど、アイルランドのバンドだし、大ヒットもあるんだしなぁ。まあ、いいや。

 Thin Lizzy 自体は以前に聴いたことがありまして、代表作の "Live And Dangerous" です。

 非常に良かったです。これはライブ・アルバムでしたから、今度はスタジオ作にしようかと思ったら、この人たち、10作以上出しているので、どれにしたらいいのか、わかんなくなり・・・。また編集盤にしました。3枚組の "The Essential Thin Lizzy" です。

 これもいいですね。時々あるメタルっぽい音は好みじゃないですが、エネルギー持て余し、肩に力が入りまくり、無闇矢鱈と意気がった若い衆による、ケレン味たっぷりのロックンロール! いや〜、派手派手、派手にかましてるわ(笑)。今聴くと微笑ましいくらいですが、「70年代はこうじゃなくちゃね!」とか、意味不明に讃えたくなります。

 そうかと思うと "Dancing in the Moonlight (It's Caught Me in Its Spotlight)" とか "The Sun Goes Down" とか、単なる熱血単細胞ではできないヒネリを見せてくれるのも素敵。

 "Whiskey In The Jar" はクレジット見ると、伝承曲が元らしいです。このへんもアイルランドのバンドらしくていい感じ。

 レーベルをまたいだ51曲収録。時代順になってない曲の並びは若干疑問ですが、代表曲はほぼカバーされているらしいです。ボリュームたっぷりでも、胃もたれする感じはないし、聴き飽きない。リーダーの Phil Lynott の生前に聴く機会はなかったのですが、良いバンドだったのですね。

今日の音楽 ー 今日にふさわしい音楽

Music Of The Chinese Pipa

 明けましておめでとうございます。またノンサッチの「エクスプローラー50+」から。

 今回は中国から。"Music Of The Chinese Pipa" 、中国の琵琶の音楽です。演奏者は江蘇省出身でアメリカに移住した Lui Pui-yuen(漢字では呂培原と書くようです)。1979年アメリカで収録されたもの。

 このシリーズの他のアルバムとは異なり、なんだか聴き覚えのある音です。もちろん、もともと日本の琵琶は中国を経由してやってきたものですから、当然ですが。

 元日、休みの。外から何も音が聞こえない静かな日に、ピッタリのシンプルで格調ある響き。たまたまでしたが、良い時に聴きました。気ぜわしい時だったら合わなかったかも。音楽は場面を選ぶものですね。

今日の音楽 ー 健在でした

Unfinished Business

 Paul Brady です。2017年の "Unfinished Business" です。オリジナル曲収録の新作アルバムは7年ぶりだそう。「あれっ」と思ったんですが、前回聴いた2015年の "The Vicar St. Sessions Vol. 1" はライブでしかもコンサート自体は2001年のものだったから、スタジオ新作としてはずいぶん間が空いてしまったのね。

 本人の弁ですが、「新しいレコードは時間をかけて作りたかった」のだそう。ただ、その間に音楽ビジネスが激変してしまったので、そもそもアルバム作りすることに意味があるのだろうかと悩んだこともあったとか。ああ、ベテランミュージシャンにとっては、現代の音楽業界はそんな風に感じられる状況なのね・・・。

 新曲9曲と伝承曲2曲。クレジット見て驚きだったのは、多くの曲でボーカルとギターだけでなくキーボード、ベース、ドラムまでこなしてほぼ一人で作っていること。マルチプレーヤーだったのね。「ミュージシャンを集めて、決められた期間内にレコードを作るというプレッシャーが好きじゃない」ってこともあったそう。

 なら、簡素な枯れた感じのアルバムかというとそうではないです(ジャケ写の印象だと、弾き語りかしらとか勘違いしそうですが)。無論、最先端というものでもないわけですが、いい塩梅にポップであり、ロックであり、フォークであるという、オーソドックスでなじみやすい音です。いきなり1曲めなんかはジャズっぽかったりして、意外にも思いましたが、そんな感じで渋めに多彩です。

 そして彼の歌声は健在。本作時点で70歳ということなんで、多少気にもなってたんですけど、心配なし。

 さすがの良作です。

今日の音楽 ー ヨーロッパといっても広うござんす

Village Music of Bulgaria

 またノンサッチの「エクスプローラー50+」から。

 "Village Music of Bulgaria" 、ブルガリアの民族音楽です。収録は1968年とのことです。共産主義時代まっただなかで、よく録音できたなと思います。

 1曲めの女性コーラスが典型ですが、はりあげるような発声で歌うのが特徴的に感じます。女性だと悲鳴に近いようなときもあります。

 楽器演奏だとなんだかイスラムっぽい気がします。そういえば、ここは長いことオスマン帝国の支配下にあったんだっけか。

 ヨーロッパの音楽というと、どうしても西の方ばかりが印象にあるのですが、そちらの方とはだいぶ異質な感じがあります。なるほど、ヨーロッパも広いしね。

今日の音楽 ー わたしには「猫に小判」だったのかも

Complete Greatest Hits

 今回はわたしによくある「ネットラジオで聴いた曲が良かったので」のパターン。

 Gordon Lightfoot 、2002年のベストアルバム "Complete Greatest Hits" です。デビューした1966年から1993年までの20曲が収められています。

 彼はカナダの人で、カナダを代表するシンガーソングライターとされているんだそうで、元 The Band でやはりカナダ出身の Robbie Robertson は彼を「国の宝」と言ったとか。ひょえっ、全然知らなかったよ。

 初期はシンプルなフォークですね。時にカントリー風味もあり。70年代に入るころから音的には厚みを増していきますが、本作を聴く限り、あくまで基本はアコースティックでギター中心のフォークというのを通した人のようです。ロック色は薄いです。声は男っぽい落ち着いた美声です。

 なるほど、評価に違わない水準の高い音楽を作っていた人らしいというのは感じます。ただ、わたしにとってはまとも過ぎて、引っかかってくるものがありませんでした。残念。これは純然たる好みの問題で、Gordon Lightfoot が悪いわけではないよね。

 「良かった曲」というのは、彼最大のヒット曲でもある "The Wreck of the Edmund Fitzgerald" です。収録されている曲の中でも一際迫力を感じる曲です。英語の聞き取りはほとんどできないので、初めて聴いたときは何を歌っているのか、さっぱりわからなかったのですが、「叙事詩を聴いているようだ」と思ったのをおぼえています。実際、この曲は発表された前年に五大湖で起きた大型貨物船遭難事故のことを歌ったものです。こうしたことを歌にするというあたり、やはり伝統的なフォークの人だったということでしょうか。

 Bob Dylan が「ファンだ」と公言したくらいなので、彼の真骨頂はおそらく詞にあるのではないかと。そうなると、英語を聴いてわかる人でないと、その価値はわかりにくいのかもしれません。

今日の音楽 ー 回想のニューオーリンズ

The Bright Mississippi

 再び Allen Toussaint を。2009年の "The Bright Mississippi" を。

 ジャズです。現代のジャズではなく、彼の故郷・ニューオーリンズの古いスタンダードをカバーしたアルバムです。1曲除いて全てインストルメンタル。

 ゆったりと郷愁を漂わせつつ、控えめに粋で、心地よい音。"Songbook" や "American Tunes" もそうでした。晩年の彼が目指した境地でしょうか。素敵です。

 "St. James Infirmary" とか、大昔、洋酒のCMでこんなん使われてなかったっけ? こちらもなんだか懐かしい気分になります。

今日の映画

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

 久し振りに映画を観てきました。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』です。

 1890年代にオクラホマのアメリカ先住民・オセージ族の居留地の地下から石油が発見された。これによりオセージ族は莫大な富を得ることになった。時は流れて1920年代、叔父を頼ってオクラホマにやってきた戦争帰りのアーネスト。オセージ族の娘と恋に落ち、結婚することになるが・・・。

 実際にあったオセージ族連続殺人事件を元にしたお話です。実際にあった、とは怖ろしい・・・。

 観てみたら、なんと3時間半近くもある映画でしたが、わたしは長いとは感じませんでした。見せ場を息もつかせず投入して飽きさせないようにしているエンタテインメント型の作品ではなし、スペクタクルな映像があるわけでもないのですが、それでも取り上げる価値のある素材を力のある人がていねいに作り込めば観応えがある作品ができるのだなと納得。

 実はわたし、レオナルド・ディカプリオを映画で観るの、初めてだったですが、ちょっとおバカさんっぽくて悪になりきれていない悪党を好演しています。でも、この人ってこういう役者さんでしたっけ?

 淀川長治みたいなおじいちゃんが出てきたな、どこかで観たおぼえがあるなと思っていたら、ロバート・デ・ニーロ! 『ディア・ハンター』からは想像もできないぞ。最後の出番で「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ・・・」とか言い出すんじゃないかと思ったじゃないか。

 音楽がいい感じだなと思ったら、元 The Band で今年亡くなったロビー・ロバートソンが担当!

 いろいろスゴい映画でした。

今日の音楽 ー 猛省

You Had It Coming

 唐突に Jeff Beck です。2000年発表の "You Had It Coming" を。

 ロック好きなら説明の要もない Jeff Beck 。とりあえずは聴くべき一人ということで、わたしもお作法的に多少聴きはしましたが、それほど関心はありませんでした。

 第1期 Jeff Beck Group は聴いたけど、Jeff Beck 本人はわりとどうでもよくて(ヒドい・・・)、この後に Faces で Ronnie Lane と組むことになる Rod Stewart と Ron Wood が参加しているからっていうのが理由でした。あんまり印象に残っていないです。

 他にはロックを聴くようになった大昔、名盤ということで、たしか "Wired" は聴いているはずですが、これもほとんど印象に残っておらず、ただ「あっ、自分には合わないな」と思ったことを憶えています。

 なので、こちらから積極的に聴く気はなかったのですが、ある時、インターネットラジオで流れてきた曲を「おっ、かっちぇー」と思ったら、これが本作収録の "Rollin' And Tumblin'" で。

 それからしばらくして、やっぱりインターネットラジオで流れてきた曲を「おっ、かっちぇー」と思ったら、これが本作収録の "Nadia" で。

 「じゃあ、試しに」と本作、買ったのはいいんですが、未聴CDの山の中に紛れてしまって忘れてしまって・・・。とかやってたら、今年(2023年)、本人、お亡くなりになってしまって・・・。ごめんよ、Beck !(泣)

 でもって、これが全編、かっちぇーのですな。わたしの好み!

 彼の長いキャリアの中でもエレクトロニカに寄った時期、ということなんだそうですけど、1960年代から演ってる人が2000年に出したアルバムとは思えないほど若々しい音です。でも、無理して若作りしたという感じはまったくなく、むしろ生き生きと、そして攻撃的に弾きまくってます。エレクトロニカ・ハードロックっつーか。今更ですが、すげーよ、Beck !

今日の音楽 ー 異世界

Tibetan Buddhism - The Ritual Orchestra and Chants

 今回はノンサッチの「エクスプローラー50+」から。

 "Tibetan Buddhism - The Ritual Orchestra and Chants" 、チベットの仏教音楽です。1973年の録音です。

 これ、日本でいうところのお声明ですよね? 乱暴に言うと、節をつけたお経のコーラス、というところでしょうか。

 全3曲、それぞれ14分、12分、25分と長いです。

 遠く離れたチベットですが、その唱え方は日本のと共通した感じはあって、「ああ、似てるな」と思いつつ聴いていたのですが、こちらの方が妙な迫力があります。地の底から湧き上がってくるような。

 1曲め、最初は声が中心。ゆったりと同じような調子が続きます。で、油断していると半分過ぎたあたりで、太鼓と鈴のような音が入ってにわかに緊迫した雰囲気になっていきます。そして終盤にいきなりホルンのような音が響き、ドキリとします。

 2曲め3曲めは冒頭から音域の違う吹奏楽器が激しく異様に交差し、恐ろしげな世界に。その後、低〜い声が戻ってきて重い空気は残るものの、いったん落ち着きます。しかし、その後も時折不穏な打楽器、吹奏楽器が挟み込まれて、心を揺さぶります。我知らず「ひぃっ」と声を上げてしまいそうです。そのはずで、この2曲は地獄の王に献じられるものだそう。

 仏教音楽というので、心安らぐ境地が展開されるのかと思いきや、とんでもない。映画『ロード・オブ・ザ・リング』のモルドールの場面にふさわしい(このバチあたり!)、と形容すれば(映画観た人には)多少わかっていただけるでしょうか?

 印象は強烈。一聴の価値があると思います。