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開店休業の記

今日の本

阿修羅像のひみつ

 『阿修羅像のひみつ』(興福寺:監修 多川俊映・今津節生・楠井隆志・山崎隆之・矢野健一郎・杉山淳司・小滝ちひろ:著 朝日新聞出版)、読了。

 阿修羅像を代表とする奈良・興福寺の仏像の数々を展示する「国宝 阿修羅展」が、2009年に開催されました。大人気だったことは記憶していますが、延べ190万人を超える観覧客を集めたとはすごい。開催にあたっては、展示会場の一つであった九州国立博物館に文化財用の大型X線CTスキャナがあったことから、出展された八部衆・十大弟子のうち阿修羅を含む9体について、これを用いた調査が行われました。そして9年がかりでまとめられた調査の一般向け成果報告が、本書になります。

 そういう性格の本ですので、歴史あるいは仏教関連の話より科学的な分析結果や判明した制作技法・工程の解説が中心で、仏像を扱った本としてはいささか異例の内容になっています。それだけにややもすると、話があまり一般になじみのない専門寄りになっていき、読みやすいとはいえないのですが、その一方でこうした新しい取り組みが始まっているのだな、今までは手に入らなかった知見が得られる時代になったのだな、という実感と、そのおかげでこれからおもしろくなりそうという予感の両方をもたせてくれる本でもありました。

今日の音楽 ー 路線変更

Kafunta

 再発されたという情報をどこかで知り、久しぶりに聴いてみることにしました、P.P.Arnold 。オリジナルの発売は1968年、彼女2作めのアルバム "Kafunta" です。

 にしても、こういう人だっけ? デビューアルバム "The First Lady Of Immediate" の印象と違う気が。なので、そっちも聴き直してみたんですが、たしかに違う。

 といっても、彼女の声、歌い方が変わってしまったわけではなくて、違っているのはアルバムの方向性というか、プロデュースというか。ちなみにプロデューサーは、当時の発売元・Immediate Records の創設者、初期の The Rolling Stones のマネージャーとして知られた Andrew Loog Oldham 。

 一言で言ってしまえば、「ロックの歌姫」から、より一般向けの「ポップ・アイドル」に、という感じです。前半のカバー3連発が The Beach Boys の "God Only Knows" 、The Beatles の "Eleanor Rigby" に "Yesterday" というあたりで、ある程度察せられるかと思いますが、前作のロック色は大幅に後退、代わってかなり甘口の雰囲気重視の音に変化しています。

 わたしは前作の方が好きですが、「こっちがいい」と感じる人もいるだろうな。作品としてのレベルは決して悪くないです。

今日の料理

餃子

 そろそろ新米が入ってきたらしく、近隣のスーパーでも少量在庫が見られるようになってきましたが、ウチはまだあわてるこたぁないと考えて買ってません。まあ、来週にでも。

 ということで、米抜きの食事を、ということで今日は餃子です。

 実は前回のお好み焼きのキャベツ(一個まるごと買った)がまだ余っていたので(笑)。

 包むまでの作り方は前回と同じ。ただ、今までは先にある程度焼いてから水を入れていたのを、今回、先に蒸し焼きにしてから最後に焼き目をつけるというやり方にしてみました。そしたら、焼き加減、やや失敗気味(苦笑)。初めてのことだし、しょうがない。もう少し工夫してみます。味はまずまず。

今日の本

スペルホーストのパペット人形

 『スペルホーストのパペット人形』(ケイト・ディカミロ:作 ジュリー・モースタッド:絵 横山和江:訳 偕成社)、読了。

 児童文学です。出版社によると、対象年齢は小学校高学年から。作者はアメリカの作家で、絵はカナダのイラストレーター。原著の出版は2023年、日本版は今年出たばかり。

 昔々、とまではいかない、少し昔が舞台でしょうか。ある町に身寄りのない老人が一人で暮らしていました。スペルホーストといい、かつて船長をしていました。体調が良くて町を歩きまわっていたある日、スペルホーストは、通りのおもちゃ屋にかざってあったパペット人形に心をうばわれて・・・。

 ケレン味のない、まっとうな童話です。ファンタジーというと、ちと違う。去年出たばかりというのが意外に思える、伝統派の作風というか。「夢を追うこと」が語られるあたりはアメリカ的ですが、それも控えめで、落ち着いた語り口に好感が持てます。

 絵も昔の絵本を思い出すような、アニメ風が多くなった今では流行らない感じですが、お話の内容にとても合っているし、わたしは好きです。

 大人が読むとちょっと苦味があるかな? 今のこどもはもっと派手な展開の方が好きかしら? どうだろう?

 読んで後味の良いお話でした。

今日の本

完本マタギ

 『完本マタギ』(田中康弘:著 山と溪谷社)、読了。

 「完本」とありますが、2009年の『マタギ』と2013年の『マタギとは山の恵みをいただく者なり』という、著者の別々の本に加筆・訂正を加えて再編集し1冊にまとめたものです。

 どちらも秋田県北部・阿仁を取材したノンフィクションで、前者は地元の猟師・マタギに同行してその狩猟の様子を記録したもの、後者は阿仁の伝統食を紹介するものです。十数年前の原著発表時点ですでに消えつつあった、北の山里の暮らしと独特な文化を今に伝えています。

 読み始めてから気がついたのですが、著者は『山怪』を書いた人でした。

 文章がなんというか、肩に力が入りすぎた感じで、内容そのものは興味深いのにどうも読みにくく、「あれぇ、こんな文章、書く人だっけ?」と怪訝な思いでした。「おわりに」にたどり着くと、著者自身が「文庫化するにあたり何度も原稿を読み直したが、たびたび落ち込んだ」と反省しており、どうやらわたしの印象は見当違いでもなかったよう。

 『マタギとは山の恵みをいただく者なり』の結びの部分に、今後10年ほどで阿仁では集団による熊猟ができなくなるのでは、という懸念が記されているのですが、近年秋田では熊による人身被害が目立って増えている様子。懸念が現実のものになりつつあるのが増加の要因の一つなのではないだろうか、とも考えてしまいます。

今日の料理

お好み焼き

 コメ不足だそうで。

 うちの近所の店でも軒並み在庫切れ。あるのはもち米くらいだったりして。

 この暑いのに、無理して探して回るのもアホらしいし、売っているところでもえらく値上がりしているらしいし。しばらく我慢してれば新米が入ってくるらしいし。

 なので、手に入りやすいもので夕食をと考えて、お好み焼きを作ることにしました。キャベツ、安かったし。

 なのですが、わたし、お好み焼き、作ったことなかったので、ネットのレシピ、あちこち見ながら作ってたら、いつのまにか1時間以上たってました。やれやれ。

 材料は

 ① 薄力粉 100g

 ② 粉末だし 大さじ1

 ③ だしのもと

 ④ 揚げ玉 大さじ1

 ⑤ 粗挽きコショウ 少々

 ⑥ きざみ紅生姜 少々

 ⑦ 卵 1個

 ⑧ 水 100cc

 ⑨ 山芋 少々

 ⑩ キャベツ 6分の1くらい

 ⑪ 豚バラ 100g

です。

 1.ボールに①〜⑥を入れて軽く混ぜる。

 2.⑦を追加してさらに混ぜる。

 3.⑧を追加してさらに混ぜる。

 4.⑨をすりおろして追加してさらに混ぜる。

 5.⑩を粗みじん切りにして追加してさらに混ぜる。

 6.フライパンを熱して油少々ひく。

 7.フライパンに生地を入れ、平らにして中火で焼く。

 8.生地の上に⑪を並べる。

 9.生地の焼いている面がきつね色になったら、裏返す。

10.肉がカリカリになるまで焼いたら、皿にあげる。

11.ソース、マヨネーズ、かつお節をかけて、できあがり。

 こんな感じでつくりました。出来上がりが上の写真(他にもう一枚あり)。

 まあまあ美味しくできました。これなら当分、夕食はお好み焼き中心でもいいかも。

 作っている時は「これで足りるかしら?」と不安だったのですが、食べると思いの外、量があり、もうお腹いっぱい。一人分にはちょっと多かったかも。

今日の音楽 ー 衝動の音

Entertainment!

 ネットラジオ・Radio Paradise で1曲聴いて気になったので、アルバムを入手。イギリスのポストパンクバンド Gang Of Four 、1979年のデビュー作 "Entertainment!" です。

 CDのブックレットに R.E.M. の Michael Stipe の言葉が載っていて、曰く、「 Entertainment! は、それ以前のすべてのものをズタズタに引き裂いた。」

 スカスカの空間でひたすら攻撃的にザクザクした音が響き続けるというものです。ひたすらにです。

 性急で硬いリズムにノコギリギター。

 パンク/ニュー・ウェイヴの時代に一瞬輝いた火花、あるいは生き急ぎの肖像。

 鑑賞するための「音楽的」な音楽じゃなくて、衝動を音にするとこうなる、というシロモノです。とにかく、音を鳴らせ、かき鳴らせ、と。

 とてもじゃないけど万人向けとは言えない、でも、こういう音を空気か水のように必要としている人、いるでしょうね。

今日の本

Rod Stewart and the changing Faces

 "Rod Stewart and the changing Faces"( John Pidgeon:著 Rock's Backpages )、読了。

 洋書です。著者はイギリスのジャーナリストです。原著は1976年に出たもので、2011年に電子版で復刻されました。わたしが読んだのは電子版。

 原著発表時点(つまり Faces 解散直後)までの Small Faces 〜 Faces のメンバー、そしてバンドとしての経歴を簡潔にまとめたものです。加えて、著者自身がローディーとして Faces のツアーに参加した体験記が含まれています。

 すでに Faces の評伝できわめて詳細な労作 "Had Me a Real Good Time: The Faces" を読んでいましたので、本書の存在を知っていても、あまり読む気はしませんでした。150ページ程度と比較的薄い本で、情報量で及ばないだろうと思いましたし。

 まあ、一応、念のため目を通しとくか、ぐらいの気分で手を出したのですが、いやいや、これは読むべき本でした! 危ない、危ない。"Had Me a Real Good Time: The Faces" や "Anymore for Anymore: The RONNIE LANE Story" にも出てこない話があるし、時代が近いので、Faces 解散から数十年後に書かれたこの二書とは異なる記述の生々しさがあります。ローディー体験記も短いとはいえ、当時のロックバンドのツアーの様子やローディーの仕事内容を知ることができる貴重なレポートです。なお、このツアー中に風邪をひいていしまった著者は Ronnie Lane に薬をもらったそう(笑)。

 Rod は当時「オレは幸運だと思う。たいてい、何でも歌えるってわかっているんだ。あえて言わせてもらうと、本当に、文字通り、ほとんど何でもね。これまで挑戦して歌えなかったのはほんの数曲だけだ。バラードを本当に上手く歌えるひとにぎりの歌い手の一人であって、ロックンロールも同じくらい上手く歌えるんだから、恵まれてるよ。」と豪語していたそうです。

 で、上手く歌えなかった例外が、Ronnie Lane の曲ではなかったかと。"Ooh La La" のころの話はやっぱり辛い・・・。

 Faces 解散後に Rod が出した "A Night On The Town" のジャケット裏の写真について、著者は「ブレザーにカンカン帽、片手にシャンパン、そしてもったいぶって人を見下すような表情。笑顔もなく、もう若き野郎どもの一員というふりもしない、新しいロッドがそこにいた。富を身にまとっていた。」と厳しい評価をしています。この評価からやはり三十数年後に出た自伝を読むと、Rod 自身、このころのことは冗談めかしながらも後悔しているみたいだしなぁ・・・、ああ。

 Faces 脱退後の Ronnie Lane の動向についても、短い1章を設けてふれています。Passing Show 失敗を、Ronnie が運と経験のせいにしていることについては、こちらも著者は批判的ですが、Slim Chance の作品については高く評価しています。

 そして、悲しむべきことに原著が出る前に経済的事情(当時も評価する人はいたのだから、もう少し売れていれば!)により Slim Chance は解散してしまっていたのですが、メンバーの Steve Simpson の言葉にはわずかに救われます。

 「あのころ、ロニーと一緒に仕事をするのは最高だった。あんな男と働いたことはこれまでなかった。彼は間違いなく唯一無二の存在さ。そして、あのバンドは狂気のバンドだった。たまに失敗ギグをやらかすこともあったけど、それを別にすれば、それまでの人生で他の何よりもあのバンドを楽しんでいた。」

今日の本

月の番人

 『月の番人』(トム・ゴールド:作 古屋美登里:訳 亜紀書房)、読了。

 以前読んだ絵本『木のロボットと丸太のおひめさまのだいぼうけん』がよかったので、同じ作者の本をもう一冊。

 絵柄は共通していますが、こちらはコマ割り、吹き出しのセリフと、絵本というより、マンガ・コミックの構成です。ちなみにコマ割りは日本のマンガと違って、すごく単純。やっぱり黒ゴマの粒みたいな点の目が好き。

 月のお巡りさんのお話です。人が住める月世界。でも、なんだか寂れきっていて・・・。

 設定としてはSF的なわけですが、全然そんな感じがしないです。かつて石炭で栄えたけれど、廃鉱になって以来、人影が少なくなる一方、という街のお話のような。イギリスでもそういう街、あるらしいですし(トム・ゴールドはイギリス・スコットランドの人)、寓意がありそう。

 色数は少なく、静かで、そして荒涼として生気に乏しい月の世界にあっています。そのくせ、どこかのんきそうな、ユーモラスな雰囲気も漂っているのが味。

 余韻がいい感じ。

今日の音楽 ー アフリカといっても広うござんす

Africa Ceremonial & Folk Music

 5ヶ月ぶりにノンサッチの「エクスプローラー50+」から、"Africa Ceremonial & Folk Music" ということで、東アフリカの音楽です。

 「エクスプローラー50+」でアフリカというと、去年ジンバブエの音楽を聴いていますけど、あちらはアフリカでも南部の方で、民族楽器ムビラを中心にした内容でした。

 こちらは東アフリカ、採録された地域はウガンダ、ケニア、タンザニアと3つの国にまたがり、異なる部族の人たちの歌が収められています。なので、ちょっとまとまりのなさは感じないでもないです。タイトルにあるように子守唄、戦士の歌、祭りの歌といった、フォークソング的なものが中心で、"The Soul Of Mbira" とは傾向が違います。

 一聴すると、「こっちがアフリカっぽい!」と。

 かなり偏見に近い感想ですが、わたしがアフリカ音楽と言われて、連想するのは "The Soul Of Mbira" の方ではなく、断然こちら。

 でも、聴いているうちに、日本の祭りの歌や仕事歌に共通する感じがあるようにも思えてきました。なんでだろ。もちろん、リズム感とかは全然違うんですけどね。