『平頼綱』(細川重男:著 ミネルヴァ書房)、読了。
ミネルヴァ書房の日本評伝選というシリーズの1冊。同シリーズの本は以前『藤原頼長・師長』を読みました。
このミネルヴァ日本評伝選というのは日本史上の古今の人物伝のシリーズで、本書巻末の一覧を見ると既刊・刊行予定合わせて数百冊になるという大規模なものです。その中でも平頼綱って、知名度の低さ・史料の少なさでトップクラスではないでしょうか。なぜ彼が選ばれたのか、疑問に思うくらい。念の為、どういう人だったか、一応書いておくと、鎌倉時代後期の人で北条得宗家に仕える御内人という階層の出身。政敵の有力御家人・安達泰盛とその一派を霜月騒動で排除して短期間絶大な権力を握ったものの、平禅門の乱で主君・北条貞時に討たれる、という人です。著者が序章で書いているとおり、これまでのところ、彼の評価は「悪人」ということになっております。
著者は日本中世史の研究者で、以前にも著書を何冊か読んでいます。
本書が刊行されたのは今年(2026年)ですが、執筆依頼を受けたのは20年以上前だそうで、単に著者が遅筆という可能性もありますが、1冊分の本の主題にするにはそれだけ難しい素材ということもあろうかと思います。
そのため、第一章で「御内人」という身分はどういったものなのかを解説し、第二章では乏しい史料から頼綱に至るまでの系譜の推定、これで全体の三割以上の分量を使ってしまっています。わたしにとってはここも興味深いところ(御内人は御家人ではないと思っていたのですが、本書によると御内人もまた御家人と考えるべきとのこと)でしたが、そうでない人にとっては本題になかなか入らないのでイライラするかも。
第三章からようやく平頼綱その人について述べられていくのですが、前述のとおり頼綱を記録した史料が非常に少なく、ことに個人としてどんな人柄だったのか、どんなことを言っていたのか、どんな考えを持っていたのか、そういったことがわかるものがほとんどないらしく、ために本人よりも、むしろ背景となる時代状況を詳述し、その中での判明している行動から頼綱の姿を浮かび上がらせ、推測していく、というような内容になっています。苦しいといえば苦しい書きっぷりですが、そうせざる得ないのはわかります。
わたしにはおもしろい本でしたが、そう思える人は限られているかも。
今回は一般向けの新書などではなくお堅めの出版社のお堅めのシリーズの一冊ということもあるのか、やや控えめですが、ところどころに著者らしい表現も。