『朱子学のおもてなし』(垣内景子:著 ミネルヴァ書房)、読了。
以前読んだ同じ著者の『朱子学入門』の続編にあたります。
なので、入門編の内容を基礎として、さらに朱子学の深奥に踏み込んでいくのかと思いきや、そういうものではありませんでした。ちょっと肩透かしをされた気分。
方向性としてはむしろ逆で、いったん朱子学だけに限らない、孔子以来の儒学全般における根本徳目に戻って、それぞれについて解説。それらを前提として朱子学を理解する上で重要なキーワードいくつかを挙げていく、という構成になっています。
著者も「おわりに」で言っているように、書名から内容がわかりにくい、何を語りたかった本なのか曖昧、という感じがしますし、続編にしては続編ぽくないのでは?
その一方で、第1部の「仁」「義」「礼」「智」「信」「忠」「孝」の各徳目の解説は、大変よいと思います。日本や中国の歴史において儒学の重要性はたびたび強調されるところでありますし、実際重要なんでしょうが、案外こうした思想としての儒学の基本はよく知られているわけではないような気がします。わたしもよくわかっていなかったので、わかりやすくてありがたいです。この部分は前作を読んでいなくてもほとんど問題なし、朱子学以前にそもそも儒学の理解がおぼつかない初心者に有用です(このへんが続編ぽくない点でもあるのですが)。
第2部の方でも、数ある儒学の学派の中で朱子学が体制教学となったのは、朱子学の注釈書が他との比較で最も完備されていたことから科挙の標準テキストに採用されたため、という思想的では全然ないひどく実務的な面での優位性を原因として挙げているところなんか、おもしろかったり。
文章も読みやすいので、読み手の興味と一致していれば良い本だと思うのですが。