"All or Nothing"( Simon Spence:著 Omnibus Press )、読了。
Small Faces 、そして Humble Pie の中心人物にして英国が生んだ最強ボーカリストの一人ともされる Steve Marriott の伝記です。2021年に出たものです。これで Small Faces の主要メンバー4人の伝記をすべて読んだことになりました。主要メンバー全員伝記があるということ自体、なかなかすごいことだと思います。が、現時点で1冊も邦訳が出ていないというのは・・・(悲)。
著者は Stone Roses のバイオグラフィー他多数の著作を持つ音楽関係の作家。
Marriott 生前の発言、それに家族やバンド仲間、マネージャーなどの彼についての証言を中心に構成されたもので、460ページもあり、内容も充実してます。
本をよく読んでいて(フィリップ・K・ディックを読んでいたらしい)、料理が上手だったとか、彼のあまり知られていない側面も紹介されたりしています。
しかし、もっぱら音楽面から彼をアイドル視しているファンがこれ読んだら、かなり衝撃を受けるのではないかしら?
前書き部分で著者が「彼は邪悪な一面を持っていた」としているのも、本書を読む限り、あながち誇張とは感じられません。
Small Faces 脱退以降の彼にはそれほど興味がないわたしも、後半、1970年代中盤の Humble Pie 末期あたりから延々と描写される転落ぶりには唖然とします。なんでこんな風になっちゃったの、この人・・・?
1973年のライブ "In Concert" での彼の存在感はすさまじいものですが、当時すでにアルコールとクスリ漬けだったそうで、きついスケジュールの中、大観衆を前にあの迫力を維持するためには頼らざる得なかったのかと思うと、聴き直して複雑な思いがします。あの時代、それは彼に限ったことではなかったのでしょうが、彼はそこから Eric Clapton や彼の友人であった Keith Richards のようには立ち直ることができず、ついにその死に至る過程は悲痛です。
Ronnie Lane との最後の共同制作となった "Majik Mijits" は1981年で、Marriott の音楽活動が低迷してすでに久しいころでしたが、その声、曲を聴いていると彼の才能が枯渇していたとはとうてい思えません。
方々で散々問題を引き起こしていながら、それでも彼のまわりに人が集まってくるのはその才、そして(平常を保っていれば)愛すべき人柄であったことが理解できるだけに、彼が自身の中に潜む闇を抑え込むことができていれば、と惜しまれます。