お粗末個人サイト 

蕭寥亭

 開店休業の記  
Blueskyへのリンク用アイコン 読書メーターへのリンク用アイコン

今日の本

ロシア政治

 『ロシア政治』(鳥飼将雅:著 中央公論新社)、読了。

 副題が「プーチン権威主義体制の抑圧と懐柔」。ソ連崩壊後、混乱の極にあったロシアが、プーチンを独裁的な最高指導者として戴く権威主義体制に至る過程を、「抑圧」と「懐柔」をキーワードに解説するものです。

 著者は旧ソ連地域を研究する政治学者。

 特徴として本全体を時系列順の記述にしてロシアの体制の変化を見ていくのではなく、第1章でソ連崩壊から現在までのロシアの歴史の概説を示した後、大統領を中心とした統治機構、政党と選挙、中央と地方の関係、政治と経済の関係、といったテーマごとに章を分けて論じているということです。それぞれの章の中では時系列順で記述しているので、章を移ると時代が戻ったりしますが、ロシアの体制に詳しくない者としては分野別に集中して解説してもらった方が頭に入りやすかったような気がしましたので、これでいいと思います。

 まず印象に残ったのは、スターリンやヒトラーのような、抑圧と恐怖に依拠した20世紀の「恐れられる」独裁者に対し、プーチンは情報操作に依拠した21世紀型の「愛される」独裁者としたところ。現在のロシアでのプーチンの高い支持率は、疑うべきところはあるものの実態に近いと著者は考えています。

 政治権力の恣意的な運用を抑制するために法があるのではなく、政治権力がその行動を正当化するために法が利用される、法の「道具主義」という言葉は初めて知りました。それでいて、大半の日常的な司法判断は適切に行われていて、国が敗訴して市民に賠償することも少なくないというのも興味深いです。

 それとひどく素朴な感想ですが、憲法で三権分立の規定はあるものの大統領はその三権の外に置かれているなど、国の仕組みがそもそも日本とかなり異なっているのだなぁと。

 わたしはソ連崩壊をおぼえている世代ですので、現在のロシアに至る歴史的展開を思い出すよい復習にもなりました。

 著者が最後に強調したいとしているのが、権威主義体制はある日突然に到来するものではなく徐々に浸透していく、どの国でも再現される可能性がある、という点です。実際、日本がそうならないという保証はなく、しっかり監視していく必要があるというのは昨今の状況からしても痛感するところです。

 読み応えありました。