『シリーズ戦争学入門 イスラーム世界と平和』(中西久枝:著 創元社)、読了。
同シリーズ、7冊めです。
このシリーズでは珍しく「イスラーム世界」と特定の地域が対象になっています。なお本書における「イスラーム世界」はほぼ中東を指しています。
加えて、翻訳書ではなく著者は日本人研究者です。おまけに著者は自分の専門分野は「戦争学」ではないと、当初執筆を断ったそうです。
そのせいもあってか、ページ数の割にまとまりのよい内容になっていることが多い同シリーズの中ではややとっちらかった印象。核問題を論じた次の章がジェンダー平等で、最終章で「戦争学」的な内容になったと思ったらイスラームとは特に関係が深いとは言いにくいサイバー戦争の話になったり。
しかし、複雑極まりない中東・イスラーム世界の状況について参考になるところは非常に多いです。特に現在の情勢を考えると(悲)。
本書は2023年の発売で、発売後に起きたガザ侵攻やアサド政権崩壊、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃などには触れられていませんが(それにしてもこうしたことが続けて起こってしまう地域であり、本書が企画された理由もそこにあるというのが不幸にして理解できます)、今まさに世界が動向を注視しているイランの核開発、その疑惑が浮上してから現在に至るまでの流れの解説は(これも不幸にして)時宜を得たものでした。他にもGCC諸国の特殊性やイスラームとジェンダー平等なども興味深いです。
それにしても・・・、中東・イスラームの各国、そしてこの地域に利害を有する各国、諸民族、様々な立場の人たち、だれが正しくてだれがまちがってるなんて、軽々には判断できないことはわかりました。
「守られるべき性としての女性が男性の親族を伴わずに単独で留学することは、イスラーム的価値観から逸脱しているという価値観が根強い」とありましたが、そういえば『サトコとナダ』でナダはお兄さんといっしょにアメリカに来たんだっけ。