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蕭寥亭

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今日の本

シオニズム

 『シオニズム』(鶴見太郎:著 岩波書店)、読了。

 まず「シオニズム」という言葉の定義から。本書によりますと「ユダヤ人の民族的拠点をパレスチナに築くことを目指す思想・運動」ということです。

 本書はこのシオニズムの歴史的展開を解説するものです。

 シオニズムは19世紀の終わりごろにロシア帝国の下で生まれたもので、ユダヤ人の長い歴史を考えると比較的最近出てきた思想ということになるようです。

 本書では、イスラエルの指導者を輩出し、シオニズム誕生の地であるロシアを含む東欧地域とシオニズムの関係を特に重視しています。

 時期的に近いため、イスラエル建国はついナチスのホロコーストと関係づけてしまいそうになりますが、本書はそれ以前からあった東欧でのユダヤ人迫害・ポグロムの影響が大きいことをかなりの紙幅を取って説明しています。

 また、イスラエル建国以前のユダヤ人がシオニズムでまとまっていたわけではなく、批判的な意見もあったことも述べつつ、ユダヤ教とシオニズムとの関係についても触れています。

 今ではイスラエルべったりのように見えるアメリカは1960年代まではさほどイスラエルに関心を持っていなかったこと、ヨーロッパのイスラエル支持にはホロコーストに対する同情だけでなく、第二次世界大戦後に発生したユダヤ難民を受け入れ先として都合がよかったことなど、本書の指摘で気がついたこと、初めて知ったことがたくさんありました。

 2025年6月にイスラエルがイランを攻撃したことには驚かされましたが、その直後、ドイツのメルツ首相が「汚れ仕事をしてくれた」と支持を表明したことには、「これはいったい!?」とさらに仰天したことをおぼえています。本書は最近出た(2025年11月発売)ものなのでこの件についても触れており、ドイツについてはホロコーストの反省と移民流入からくる「親イスラエルと反イスラームがリンクしてしまっている」と見ています。

 などなど、基礎知識が足りてないわたしは一読ではなかなか内容を消化しきれない感じでしたが、その分、歯ごたえのある本だとも思いますし、発売から間もないこともあって、現在の不幸な状況におけるイスラエルの思考を理解する一助になりそうな本です。