『治安維持法』(中澤俊輔:著 中央公論新社)、読了。
「悪法」と知られる治安維持法。わたしも高校の日本史の教科書に書いてあったのを見たおぼえはあります。「見たおぼえ」というのは、授業が結局そこまで進まなかったので・・・。
どう「悪法」だったのか、改めて知ろうと思い、読んでみました。
著者は日本政治外交史の研究者。
本書は著者の学位論文や学会での発表をもとにしているそうで、それらしい文章・構成です、そのせいか、研究者ではない一般の読者には読みやすいとは言いにくいです。また、治安維持法が存在した時代は国の仕組みが現在と違っていて、枢密院という今はない機関があったり、検事が裁判所に所属していたり、「んん?」と思うことがしばしば。
政府批判の動き(現代なら「何が問題なの?」という穏当なものから、現代でも「ダメです」の一言で終わる暴力的なものまで)にどう対応するかという当時の当局者の問題意識が治安維持法制定の背景にだったようだ、というのがわたしが読んで得たざっくりとした理解です。
その上で、紆余曲折を経て制定されたのが1925年。当初は主に無政府主義や共産主義を念頭に置いた、結社取り締まりのためのある程度限定された法律だったのが、数次の改正と適用対象の曖昧さから左翼でも右翼でも宗教団体でもなんでも検挙の道具と化していく過程は考えさせられます。
もともと、最初の制定の時点でも人権や言論・出版の自由の観点から批判が少なくなく、戦前期でもそういう観点はちゃんとあったということ、その後政党政治の衰退とともに歯止めが効かなくなっていったこと、対象が曖昧な法制度の危険性などは、しっかり頭に入れておきたいと思います。