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蕭寥亭

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今日の本

北条義時

 『北条義時』(岩田慎平:著 中央公論新社)、読了。

 大河ドラマの主人公になったこともあって、以前はさほどなかった一般向けの北条義時関連の本がたくさん出てきて、興味をもっていた立場としてはありがたいのですが、しかし、『史伝 北条義時』では著者に「義時の赤裸々な人間としての性格はどうかと問われると、結局、想像の域をでない」と暗に個性の乏しさを指摘され、『頼朝の武士団』では「つまんない人ねェ〜」とあっさり切り捨てられ、本書「はじめに」でもいきなり「やはりどこか、影が薄い」と言われる始末。義時・・・。

 で、なんとなくわかってきたのは、ほんとにこの人、記録が少ないのだな、ということ。特に彼個人の性格がうかがえるような発言の記録が嘘くさい後代の捏造っぽいのも含めてあまり残っていないようだし、そもそも発言全般があまり残っていないようだし。

 歌とか残してくれたらその心情を探るのに参考になったんでしょうが、どうもないらしい。それはそれで、そういうことする育ちではなかったという傍証になるかもしれませんが。ちなみに息子の泰時は歌があるそうです。

 行動面でも彼が歴史的重要な人物であるわりには記録が乏しいし、それに自発的に行動しているようにあんまり見えないです。小御所合戦にしても畠山重忠追討にしても和田合戦にしても承久の乱にしてもこの時代の重要な事件でなんですが、いずれも義時、親父に行けと言われたから行ったとか、先に攻撃されたから反撃したとか、そんなんばっか。

 和田合戦は義時が挑発したとよく言われますが、そうでしょうか? この時代の武士なら挑発なんて悠長なことするより、自分からさっさと攻撃をしかけるものでは? 挑発しておきながら相手に先手を打たれて、将軍御所まで焼かれるというのでは失態としか言いようがないし。

 そういう人の伝記を書く苦しさが、本書の随所に現れているという感じです。特に源頼朝が亡くなるまでの前半、全体の4割くらいの分量ですが、義時、ロクに出てきません。頼朝とか平家とかの他の人の話の方が多いくらい。全体を通してみても、北条義時の伝記というより義時の生きた時代の簡潔な解説、といった方が近い気がします。