『あずかりっ子』(クレア・キーガン:著 鴻巣友季子:訳 早川書房)、読了。
『あずかりっ子』という邦題で、『はみだしっ子』を連想してしまいました。関係は特にございません(多分)。
もとい。
アイルランドの作家の中編小説(2010年)です。去年、観た映画『コット、はじまりの夏』のもとになった小説ということで読んでみました。
映画を観たときにはすごく短く感じられてもうちょっと描写が欲しかったと思ったのですが、この小説自体が100ページ程度と映画にするにはかなり短いものだったんですね。
母が出産のため面倒をみられないということで、親戚の家に預けられた少女のお話です。そこは映画と同じですが、明らかに違っている部分がいくつかあります。先に映画をご覧になっている方にとっては、そこもお楽しみになるかもしれません。
主人公の少女の視点で物語が進みます。ケレン味のない非常に簡潔な文体です。置かれた状況に対するその時点(訳者の解説にもありますが、現在形で書かれているというのが重要でしょう)の少女の心情が描写の中心になっているのですが、心情ベッタリになるのではなく、抑えた筆致で説明的ではないのに読んでいると情景が思い浮かぶというあたり、作者の非凡な力量を感じます。
ドラマティックな展開はないのですが、落ち着いた雰囲気で静かに心に浸透していくような、そんなお話です。そうした印象は映画と共通しています。映画を観て良いと思った方に特にお勧め。