『近代美学入門』(井奥陽子:著 筑摩書房)、読了。
「〇〇の美学」なんていう言い方はよく使われるものですが、そもそも美学って何よ?
ふと、そんな疑問が浮かんだので読んでみました。著者は美学の研究者。そもそも美学ってれっきとした学問分野の一つなんですね。それすらちゃんとわかっていませんでした(おバカさん!)。
本書「はじめに」によりますと、「美学とは、美や芸術や感性についての哲学」とのことです。中でも本書は近代(17世紀あたりから)ヨーロッパの美学について解説していくものです。
市民講座での講義を元にしたのだそう。なるほど、それっぽい流れ(授業っぽい)で書かれています。一般向けだったからでしょうか、文章はわかりやすいです。ですが、内容は新書としてはかなり濃密で、わたしは消化しきれたとはちょっといえません。でも、考えさせられることはたくさんありました。
『保守主義とは何か』で「保守主義の出発点」とされた18世紀イギリスの思想家・政治家エドマンド・バークが、まさか美学の本でも重要な存在として登場するとは思わなかったな。
17世紀のイギリス人神学者が欧州大陸へ旅行に出てアルプスを見て衝撃を受け、山を原罪の象徴と主張したという話で思い出したのは、イギリスにはそもそも高い山がないってこと。ブリテン島の最高峰はスコットランドにある山で、日本の山と比較してもさして高くない1300メートル台、イングランド域内の最高峰だと1000メートルに満たないそうで、山をしばしば神として崇めキリスト教思想の影響薄い日本人からすると、山を原罪の象徴というのは滑稽にすら思えますが、感性というのは生まれ育った環境に強く影響されるものなのだなと感じます。
アルプスの山のような、圧倒的で己の卑小さを自覚せざる得ない畏怖すべき存在の認識が近代の「崇高」という概念へとつながっていくという解説で、「これってどこか似た話を聞いたような」と、また思い出したことがありました。あれだ。ゴシックだ。
その他、「技術」から「芸術」への転換、「芸術」とは何か、記名性、「風景」概念の誕生など、興味深い論点多数。
おもしろかったので、他にも美学の本、読んでみようかな。そうそう、巻末には美学に関する読書案内もあります。