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今日の本

史料からみる中国法史

 『史料からみる中国法史』(石岡浩・川村康・七野敏光・中村正人:著 法律文化社)、読了。

 大学の法学部向けの教科書として編集されたものだそうです。大きく体制が変わったとはいえ、地続きである前近代の中国の法制度を学ぶことにより現代中国の法制度への理解を深める、さらに前近代の中国の法制度は日本に与えた影響も大きくその淵源を知ることで日本の法制度の歴史への理解も深めるという目的があるとのこと。

 入門レベルの本といっていいかと思います。中国の歴史や法律の多少の知識はあった方が理解しやすいと思いますが、内容そのものは難解ではありません。

 こうした内容の本が翻訳ではなく日本で書かれているというのもなかなかすごいなと思うのですが、巻末の参考文献の一覧を見ると日本でかなり研究の蓄積がある分野なのだなとわかります。

 第一部で古代以来の前近代中国法制度の流れを概説し、第二部以降で主に唐以降の裁判制度、刑事法、家族法に触れていくという内容です。残念ながら行政法等については省略されています。

 第一部で前漢・文帝の刑罰制度改革の説明があります。文帝が肉刑(身体を傷つける刑)など苛酷な刑罰を廃止したことは史記にも見え、文帝の功績として讃えられることが多く、わたしも知っていましたが、その一方で従来肉刑に相当していた罪が肉刑廃止により死刑相当になってしまい、文帝期以降、かえって死刑の執行数が大幅に増加してしまったということは本書で初めて知りました。あらら・・・。

 その後の時代も、罪に対してどのような刑罰が与えるのが適切かについては試行錯誤が繰り返されたようで、この問題の難しさがわかりますし、それは現代の日本でも同じかもしれません。

 具体的な制度・判例などが引用される第二部以降がとてもおもしろいです。

 「拷問はなぜ必要とされたのか」、「正当防衛は認められたのか」、「婚姻はどのように行われたのか」など、目次の題目だけ見ていてもおもしろそうですが、実際興味深いものでした。

 前近代の中国でも一般人が訴えを提起できる制度はあったのですが、手続きや費用などの点から少なからず断念することがあったようです。これは現代日本でもありそう。

 その一方で、南宋期にはやたらに訴訟をそそのかして関係者を食いものにするような輩がいたそうで、これも現代日本でありそう・・・。

 他の例でも、現代日本の法制度を考えさせられることが少なくありません。

 家族法のところでは『守娘』や『紅夢』をちょっと思い出したり。

 関心を持つ人は限られていそうですが、関心があるなら読んで損はないかと。