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蕭寥亭

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今日の本

生物から見た世界

 『生物から見た世界』(ユクスキュル/クリサート:著 日高敏隆・羽田節子:訳 岩波書店)、読了。

 この前読んだばかりの『動物には何が見え、聞こえ、感じられるのか』のテーマである、様々な動物それぞれが主体として主観的に意味を与えて構築した世界、「環世界」という概念を初めて提唱したのが、本書の著者であるエストニア生まれの動物学者ヤーコプ・フォン・ユクスキュルです(もう一人の著者ゲオルク・クリサートは絵を担当)。本書はその「環世界」とはどのようなものかを紹介する(おそらく一般向けの)科学書です。

 『動物には何が見え、聞こえ、感じられるのか』が素晴らしかったので、同書でも敬意をもって紹介されていた本書も読んでみました。

 驚くのは原著の出版が1934年ということ。戦前! 「環世界」という概念にたどり着いたのはそれ以前でしょうから、ほぼ1世紀も前からある考え方なのですね、きっと。しかし先進的すぎたためか、「訳者あとがき」によるとユクスキュルは大学に所属できずフリーで研究していた時期も長く、評価されるようになったのは晩年だそう。本書が出たのもユクスキュル70歳の年です。

 160ページ程度と短めの本ですが、古典的な文体(書かれた時代を考えるとしかたないですが)に聞き慣れない用語と、正直読みやすいとはいえないです。「訳者あとがき」にも指摘がありますが、1930年代の科学知識を元に書かれているので、今となっては否定されていることも含まれています。エーテル波とか。

 それでも、いずれの主体もその主観的現実だけが存在する世界に生きており、そして人間の勝手な「客観」では不可解な動物の行動が、その主体である動物の「主観」を、彼らが持つ知覚がどのようなものであるかを、想像し考察の前提にすることで理解に近づける、という本書の主張は古びていないどころか、現代においてはユクスキュルの生きた時代よりもはるかに重要な視点となっているはず。

 時を超えて残る著作というのはこういうもの、という一つの例です。