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蕭寥亭

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今日の本

日本政治思想史

 『日本政治思想史』(原武史:著 新潮社)、読了。

 もともとは著者が講義をしていた放送大学の教科書として出版されていた同名の本を大幅加筆修正したものだそうです。

 「まえがき」で著者が断りを入れていますが、時系列で主要な思想家とその思想の内容を並べていくよくありそうな形式ではなく、著者が重視するテーマ別に章を分けて解説していくというものになっています(まったく時系列を無視しているわけではありませんが)。これはあえて意識してそうしたとのことです。

 章立てを見ると、空間、時間、鉄道、朝鮮王朝との比較、東京と大阪の比較、シャーマン的女性、戦後と著者らしいものになっています。これを独自の視点でおもしろいととるか、クセが強すぎるととるかは読者次第。わたしはおもしろいと思います。

 裏表紙の惹句に「江戸時代から現代にいたる」とありまして、個人的には印象的。

 江戸時代から、になっているのは、それより前の時代が著者の守備範囲から外れるからというのもあるのかもしれませんが、政治思想の分野でまとまったテーマを見出すのが難しい時代だから、というのもあるのかなと思ったり。

 以前、読んだ『日本思想全史』は政治以外も含む日本の思想史概説だったのですが、古代から中世にかけては仏教関係を除くと「思想」が漠然としていると感じたのをおぼえています。

 そういえば、本書では儒学、国学、明治以降の外来思想と比べて仏教の影が薄いです。政治以外では日本人の思考に大きな影響を与えた仏教も、こと政治面では本書で引用されている丸山眞男の言うO正統としての教義が弱いからでしょうか。

 鎌倉幕府に『立正安国論』を提出した人物が宗祖の日蓮宗の系統は、例外的に政治色を濃厚に保持していそうで、実際本書にも何人かその系統の人物が出てくるのですが、紙幅の関係上、日蓮主義などは詳述できなかったそうで、それは残念。

 以前読んだ同じ著者の『象徴天皇の実像』で、昭和天皇がキリスト教に好意的だったとあって不思議だったのですが、昭和天皇は皇太子時代に行ったローマで法王に、カトリックは日本の政体を否定しない旨のことを言われており、宮中祭祀とキリスト教は両立しうると考えていたとか。なるほど。

 最終章最終部の著者の苦言にはまったく同意。われわれは主権者であるにもかかわらず、その自覚がなさすぎだと忸怩たる思いです。