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蕭寥亭

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今日の本

厨房から見たロシア

 『厨房から見たロシア』(ヴィトルト・シャブウォフスキ:著 芝田文乃:訳 白水社)、読了。

 帝政末期からプーチン時代までのロシアと旧ソ連構成国の激動の歴史を、料理人(その関係者を含む)の視点による料理人の語りで振り返るという、よくこんな奇想天外な企画を思いついたものだとそれだけでも感心してしまいますが、中身も企画倒れに終わらない、おそろしく濃いものになっています。

 本書はロシアによるウクライナ侵攻直前までの取材に基づいて書かれたもので、今となってはロシアにもベラルーシにも著者は入国できなくなっており、またインタビュー時点でかなり高齢だった幾人かは「あとがき」の時点で亡くなっており、ギリギリのタイミングで書かれた貴重な本ともいえそうです。

 ニコライ2世一家と運命をともにした料理人の逸話。食べ物にむとんちゃくなレーニン。人為的に起こされたウクライナの大飢饉の中、人々は何を食べていたのか? その大飢饉を起こした張本人といわれるスターリンは何を食べていたのか? レニングラード、エストニアの森、アフガニスタン、チェルノブイリ、クリミア。ガガーリン、ブレジネフ、ゴルバチョフ、エリツィン。そして、祖父が料理人だったというプーチン。

 意外な話、奇妙な話がいっぱい。そして、場所と時代を考えれば当然ながら、恐ろしい話、悲しい話もいっぱい。

 著者はポーランド人ジャーナリスト。原著もポーランド語で書かれたものです。ポーランドの本というと日本では珍しい部類に入るかと思いますが、訳も良く、こなれた読みやすい文章になっています。400ページを超える厚い本ですが、読み通す価値は十分。

 これは良い本です。