『ドキュメント北海道路線バス』(椎橋俊之:著 筑摩書房)、読了。
かつて北海道各地にはりめぐらされていた鉄道はここ数十年で廃止が相次ぎ、今では見る影もありません。代わって地域の公共交通の担い手になったバスも、近年報道にも取り上げられているように、経営は厳しい状況にあります。2年前、北海道へ行った時、ある街の路線バスの車体下部が錆びて傷んでいるのがはっきり見て取れる状態で営業に使われているのを目撃し、否応なしに実感させられました。
本書は副題にもある『地域交通最後の砦』の今(2025年3月発売)を報告するものです。
前半は道北・道東の長距離バス路線の乗車記、後半はバスの未来に向けての取り組みと現在の危機について。
前半の乗車記は単なる観光案内的なものにとどまらず、厳寒の地域でのバス運行の難しさや運転士・地元利用者の声、技術や制度、歴史的な事情など盛り沢山です。バリアフリーの車両は段差が辛い利用者にとっては大きな恩恵がある一方、低床のため風が吹き抜けるスペースが減って横風の影響を受けやすくなった、といった現場取材が効いている話が興味深いです。
個人的に、乗車記の路線のかなりの部分を自転車やかつてあった鉄道で通ったことがあるので、懐かしかったです。
後半は自動運転、DMVやBRTの現状、イギリスのバス優先政策の現地体験記、バス事業の抱える問題と続きます。
バスの運転士になるために必要な大型二種免許は、普通免許を持っていても取得費用が40〜60万円もかかるとは驚き。なのにバス運転士の収入はここ20年以上の間、下がりっぱなしで全産業の平均よりも低いとあっては、そりゃ、なり手がいなくなるわなとため息。
非常に中身の濃い内容で、読み応えがありました。