『そして、「悪魔」が語りだす』(グウェン・アズヘッド/アイリーン・ホーン:著 宮崎真紀:訳 海と月社)、読了。
なかなかおどろおどろしい書名ですが、原題が "The Devil You Know" 、直訳だと「あなたの知っている悪魔」なので、大きく外れているわけではありません。
著者の一人・英国の暴力犯罪者専門の精神科医・セラピストが出会った犯罪者たちが抱えていた心の問題を、友人である作家・脚本家であるもう一人の著者とともに、プライバシーに配慮して再構成した形(つまり実話そのままではありません)で紹介するという内容です。
登場するのは連続殺人犯、放火犯、実父殺人犯ら11人。
400ページを超える分量でしたが、非常に興味深い内容でしたので数日で読んでしまいました。興味深い点がたくさんあったので、感想は逆にまとめにくいです。
まず、当事者である精神科医・セラピスト単独ではなく、作家・脚本家と共著にしたのは正解だったのではないかと思います。精神科医・セラピストの専門性に流れすぎていないし、重い内容にもかかわらず読みやすく仕上がっているのはその効果のように感じました(ぎこちなさの少ないよい訳、というのもあると思います)。
直接的に犯罪者の精神面を追った本ではありませんが、『死刑になりたくて、他人を殺しました』を思い出したり。
そして、頭の中で The Who の "Real Me" のあの歌詞が繰り返し流れていたりして。
"Can you see the real me, docter? docter!"
日本ではセラピーというものがあちらほど普及していないので(わたしも受けたことがありませんし)、その効果にピンとこない憾みはあります。
英国のお話で、かつ医療のお話でもあるので、NHSの予算が大幅に削減されて・・・というのが何度も出てくるのですが、それを聞くとブレイディみかこ姐さんの諸作を思い出したり。
この本に出てくる「悪魔」たちは、フィクションに出てくる負のファンタジー的異常性格の重犯罪者(あれはやっぱりエンターテイメントだからだよな、悪役の重要性は多くの創作者の説くところでありますし)とはまったく違います。そこは著者が強く訴えているところですし、忘れずに心に留めておきたいです。