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蕭寥亭

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今日の本

憎悪の科学

 『憎悪の科学』(マシュー・ウィリアムズ:著 中里京子:訳 河出書房新社)、読了。

 実際にヘイトクライム(個人的にはピンとこない用語で、訳して「憎悪犯罪」とした方が理解しやすいです)の被害者となった経験を持つ英国の犯罪学者(元はジャーナリスト志望だったのが、被害を契機に犯罪学の研究に転身したとのこと)による、科学の観点からなされた憎悪の研究成果を幅広くまとめたもの。

 副題に「偏見が暴力に変わるとき」とあるように、偏見が憎悪の根底にあるとの立場から書かれています。

 研究者による本らしく、まず「憎むとはどういうことか」から始まり、ヘイトクライムの現状、脳・神経学や生物学の観点からの憎悪、そして憎悪がどのように促進されてしまうのか、へと進んでいきます。

 幅広い分野の研究分野の成果をとてもたくさん紹介しているので読むのに時間がかかりましたが、読みにくい訳文ではないと思います(ただ、「聖なる価値観を脅かす者を非難すること」を「義憤」と訳してあるのには違和感がありましたが)。

 相模原障害者施設殺傷事件が事例として挙げられています。あの事件が起きたのは2016年。気がつけばずいぶん時間が経過しましたが、あれから日本の状況が改善しているとはあまり思えません。憎悪を煽るような表現はむしろ増えているような気もします。日本だけでなく、世界でも。

 せめて、自戒はせねば。