『超約 ドイツの歴史』(ジェームズ・ホーズ:著 柳原伸洋:日本語版監修・監訳 小林百音・櫻田美月:訳 東京書籍)、読了。
異色の一般向けドイツ史です。原著は2017年に出ています。原題が "The shortest history of Germany" ですから、日本語題は近いです。
"The shortest" というのが誇大かどうかは読む方の判断に任せるとして、紀元前のローマ時代から現代に至るまでの二千年をほぼ300ページに要約しているので、短いのはたしかに短いです。
二千年を概ね五百年で区切った4章構成なのですが、最初の第1〜3章を合計たったの100ページでかっ飛ばし、残り3分の2を西暦1525年から現在までの第4章に丸々充てるという偏ったバランスになっています。なので、カール大帝についてもマルティン・ルターについてもせいぜい10ページくらい、カノッサの屈辱についても軽く触れる程度です。
もう一つ異色なのは、本書の著者はドイツ人ではなく、イギリス人だということ。監訳者によると、本国でベストセラーになっただけでなく、ドイツ語版(!)も出版され、某国際ECサイトの英独どちらでも評価が高いとのこと。確かめてみましたが、そのとおりのようです。
さらに異色なのは、著者が東エルベ(≒プロイセン≒旧東独)とそれ以外を大きく異なる地域とし、後者は西ヨーロッパに含まれるが前者はそうではなく、1990年の東西ドイツ統一も疑問視していることです。それが本書全体を通じて主張されています。
この短さの中に強い主張を盛り込んでいるため単なる概説書とは言い難く、ドイツ史初心者(わたしもそうですが)が最初に読む本としてはどうだろうかという気がします。わたし自身、著者の主張は妥当なのかそうでないのか、判断できずにいます。
一方、これがドイツ本国でも高評価というのは・・・、う〜ん。
ドイツ史の基礎を勉強したいという人ではなく、この著者の主張を吟味したいという人なら一読の価値があるかも。