『旅芸人のいた風景』(沖浦和光:著 河出書房新社)、読了。
表紙の写真の女性(春駒という芸をする人だそう)の少し憂わしげな表情が印象的。
今はほぼ姿を消したかに思われる旅芸人を紹介する本です。著者は民俗学者。
戦前までは街道を往来する旅芸人がいたそうで、昭和のはじめに生まれた著者は、自分たちが彼らの姿を実見した最後の世代だろうと述べています。
著者の思い出や様々な彼らの芸、歴史的な起源など、いろいろな話がごちゃまぜになっていますが、読みやすい内容です。
読んでいて思い出したのが『一〇〇年前の女の子』。大正期の栃木の農村に、ごぜさん、「三味線を弾いて歌を聞かせ、お金をもらって歩く盲目の女の人」たちが来ていたことが書かれていました。旅暮らしで自炊をするため鍋を背負っていたとか。貧しい身なりであっても神様に近い人と思われていたそう。本書にあるように、異界からやってくる神々の代理人としての一面がうかがえます。
なお、本書で紹介されている「ガマの膏売り」は、茨城県の伝承芸能となって保存会があり、旅芸人がやっているものではないにしろ、今でも見ることができるそうですよ。実はわたし、小学生の時に遠足で筑波山に行って見ています。