『日本史の現在 3 中世』(高橋典幸:編 山川出版社)、読了。
新史料の発見や研究の進展に基づいた日本史の現在の研究状況を解説するシリーズ『日本史の現在』全6巻の3巻め。範囲は院政期から戦国時代まで。長い上に古代に比べて史料も増加しているはずの期間なので、1冊でカバーしようというのはちょっと苦しい気もします。
今回もわたしが学校で習ったころの通説とは変化している点が数多くありました。
まず、基本的なところで、日本の中世の始まり。従来は最初の武士政権成立ということで鎌倉時代からということだったと思いますが、現在の高校の教科書では院政期からとなっているとのこと。これは時代区分の判断基準が、単に政権の主体がどこにあるかということより社会の変化を重視するようになったからだそうです。
荘園については、以前読んだ同名の本でも研究の大きな進展が感じられたところで、やはり本書でも取り上げられています。まだまだ解明すべきことはたくさんあるようですが。
気候変動による影響が取り上げられているのも「現在」らしいです。わたしが高校の時には、まったく言及されなかった点だと思います。
人物偏重の歴史観だと見逃されやすいところですが、農村の変遷や貨幣流通の動向なども個人的には興味深かったです。
応仁・文明の乱以降の室町幕府将軍については、幕府の衰えに加えて継承がグダグダになっていったこともあって、かつて教科書ではほぼ無視されていたんではないかと思いますが、本書には簡潔な解説があり、理解しやすかったです。
続巻も読むつもりです。