『経済はロックに学べ!』(アラン・B.クルーガー:著 望月衛:訳 ダイヤモンド社)、読了。
「音楽業界を研究することで経済や人の振る舞いについて新たな洞察を得られる」という観点で論じる、ポップな経済書です。著者はオバマ時代の大統領ブレーンだったアメリカの経済学者です。
おもしろい。ノリは軽いんですが、内容は充実しています。でも、わたしについて言えば、「経済について新たな洞察」が得られたということではなく、過去、そして現在の音楽業界がどのような経済システムで成り立ってきたのかを、いろいろ知ることができた、というのがおもしろかったところです。
売上はレコード・CDといった物理的な媒体からライブへ、コラボ曲(フィーチャリング***)増加の裏側、ひとにぎりのスーパースター・「勝者総取り」、ヒットは運?、そしてネット配信の影響など。
今どき風口語寄りの翻訳は賛否が分かれそう。ただ、原文がもともとそれっぽい感じじゃないかなという気はします。
経済とは直接関係ないところで、印象に残ったこともいくつか。
ハートブレイカーズのドラムだったスティーヴ・フェローニの短いインタビューが掲載されています。バンドでの待遇などの話の他、晩年ケガの後遺症による痛みに耐えながらステージに上がっていたトム・ペティに触れ、「ずっと苦しかったんだよあいつ」と・・・(涙)。
10年以上前に観た映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』の主人公・シクスト・ロドリゲスについても言及がありました。
それで気になって、彼のことを少し調べたところ、映画の公開の後、一躍脚光を浴び、アメリカを始め世界各国をツアーで巡ったそうです。緑内障を患っていることが判明しましたが、その後も音楽活動を行い、2023年に81歳で死去。
その一方で『シュガーマン 奇跡に愛された男』の監督は、この映画でアカデミー賞・長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したにもかかわらず、その2年後に自殺! まだ36歳でした。
実は本書の著者も、原著の出版と同年の2019年に自殺。58歳。
なんてことだ。世の中、どうなってるんだ・・・。