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蕭寥亭

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今日の本

南北朝時代

 『南北朝時代』(会田大輔:著 中央公論新社)、読了。

 南北朝時代、といっても日本ではなく、中国の方です。隋の中国統一によるこの時代の終了が589年で、14世紀に始まった日本の同名の時代に先立つこと700年以上で、こちらが本家です。隋以前の統一王朝・西晋の滅亡後の五胡十六国時代から通算すると、270年以上となる長い中国分裂の時代の後半です。

 日本ではあまり知られていない(同じ分裂時代でも、これ以前の三国時代や秦末楚漢争覇期に比べると全然)時代の概説です。知られていないのは手頃な概説書がないことも一因かと思われるので、これは良い企画です。

 読みやすく一般向けとしてよくまとまっていると思います。時系列順に南北双方を併記してしていくのではなく、章ごと交互に両朝の一方についてまとめて叙述していく形式をとっており、これは賛否ありそうですが、わたしはよいと思います。各王朝の興亡が主体で、著者も「あとがき」で言っているように、他の面、文化や社会、風俗などについての記述はほんの少し。ここは残念なところですが、そこまで詳述していると新書一冊では収まらないでしょうから、しかたないです。

 読んで思うのは、主役らしき存在が見当たらない、ということです。40代までに死んでしまう短命な君主が多いので、そうなるのかもしれません。殺害されたり廃されたりする君主も多数。知られていないもう一つの要因かなと感じます。

 とにかくドタバタと落ち着きのない、不安と猜疑の時代、という印象です。誰が何をやっても、なかなか安定しない(そこは日本の南北朝期と似ています)。

 西晋末の動乱期から軍事力でもって華北を席巻した北方の遊牧系民族、その思考・行動・文化が、それまでの伝統的な中国の在り方に容赦なく注ぎ込まれた結果、融合して新たな秩序が成立するのにこの長い時代が必要だった、ということでしょうか。

 もう一つ、興味深かったのは、直系継承を実現するため権力を握ったまま譲位し上皇になる、という北魏の事例。これを若年の孫(文武天皇)に皇位を継承させることを望んでいた持統天皇(譲位して日本初の上皇となる)が参考にしたのではないかと、終章で著者が指摘します。このやり方が日本では平安期以降定着するのですが、南北朝以降の本家・中国では例外的な事例にとどまることになる、というのも歴史のおもしろいところ。

 もう一つ、わりとどうでもいいことですが、専横の果てに何を考えたのか「宇宙大将軍」などと称した武将が南朝にいたとか(笑)。現代ならギャグマンガに出てきそうなバカっぽいセンスですが、傀儡だった当時の皇帝もさすがに呆れたらしいです。