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蕭寥亭

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今日の本

ビートルズ vs. ストーンズ

 『ビートルズ vs. ストーンズ』(ジョン・ミクミライアン:著 梅崎透:訳 ミネルヴァ書房)、読了。

 ビートルズについてもストーンズについても、もはや改めて書くことがあるとは思えないくらいたくさんの本が出ていますが、また一冊。

 著者はなんと歴史学者。著者自身、本書は歴史書であると言い、1960年代におけるビートルズとストーンズの関係(反目するライバルだったのか、実は互いに協力する友人だったのか)を検証しています。と同時に、当時、この両者の一挙手一投足を息を呑んで見つめていたファン、そして髪を伸ばした若者たちに振り回されるようになった世間の様子を伝えています。音楽評論の本ではありません、念のため。

 おもしろかったです。歴史学者が書いたというと、堅苦しくて退屈そうですし、たしかにエンターテイメント本のような内容ではありませんが、著者が「ゴシップ的ではある」と言うように下世話なことにもしばしば触れています。そもそも、ロックとは高尚なものでない、ということを思い出すにもちょうどいいかと。

 数多くあった興味深い点からを一つ挙げると、熱狂的な人気を獲得した後、ビートルズ自身がそれは長くもたないと考えていたこと。すでに彼らが「歴史的な存在」になってしまっている現在ではかえってイメージしにくいことですが、レコードデビュー直後、初期のビートルズは十代、特に少女の絶大な支持を受けるアイドルバンドであり、当時、そうしたグループは概して短命で、数年すれば忘れ去られるのが通例だったからです。そのため、人気がなくなる前に必死になってカネを稼ごうとしていたフシがあるそう。

 ひょっとしたら、純粋に音楽面で両グループを評価したいファンとしてはあまり聞きたくないような話(「ゴシップ的」でありますゆえ)が多いかも。ご注意。

 音楽のことはとりあえず置くとして(他にたくさん本あるし)、当時の彼らの立ち位置を知りたい、という人の方が向いている気がします。