
『北欧神話入門』(菅原邦城:著 東京書籍)、読了。
数年前にニール・ゲイマンの『物語北欧神話』を読みました。
おもしろかったので、今度は「物語」ではなく、北欧神話の原典について解説してくれるような本が読みたいなと思っていました。
ちょうどよかったです。本書は北欧を専門とする文献学者によるもので、初心者向けの北欧神話の解説書です。予備知識がない読者でも十分ついていけるようなやさしい文章で、まさに入門書らしい入門書です。
序章は北欧神話の文献の解説で、ここはやや学問的ですが、以降は、登場する神々、神々と敵対する巨人たちや怪物の紹介をはさみながら、天地創造に始まり神々の運命・ラグナロクに到る神話のあらましです。
現代の小説的に概ね首尾一貫した一つのお話として読みたい、楽しみたい、という読者なら、もちろんそうした読者向けに再構成された『物語北欧神話』をどうぞ、ということになりますが、こちらは「物語」ではわかりにくい、あるいは端折られがちな、神格・名称・行為などの意味するところや歴史との関係、文献間での相違・矛盾などの解説があります。そうした点を重視するなら本書でしょうか。
北欧というとわたしはどうもスカンジナビア半島ばかり思い浮かべてしまうのですが、北欧神話の重要文献の多くはそこから少し離れたアイスランドで書かれたもの、というのはうかつにも初めて気がつきました。もちろんスカンジナビア半島の方とも共有されていた神話で、かなり広い範囲で伝えられてきたのですね。
『物語北欧神話』を読んだ時も思ったんですが、敵役の巨人たちより神様たちの方が、性格、悪くないか? 著者もそう思ってるみたいだし。
なお、著者は本書発表前に亡くなっており、そのため他の神話との比較を予定していたらしい終章のみ未完となっていますが、それ以外の原稿は生前にほぼ完成していたので、北欧神話そのものの概要を知るには十分な内容となっています。
こちらもおもしろかったです。