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開店休業の記

今日の本

裁判員17人の声

 『裁判員17人の声』(牧野茂・大城聡・裁判員経験者ネットワーク:編著 旬報社)、読了。

 一般国民の中から選ばれた裁判員が刑事裁判に参加する裁判員制度。2009年に始まったので、もう15年経ったわけですか。その割には裁判員の実情はあまり知られていません。そこで裁判員経験者17人にインタビューして、その体験を語ってもらい、「安心して前向きに裁判員裁判に参加するための有効な情報として」編集したのがこの本だそうです。

 選ばれる前までの裁判・裁判員制度の知識や関心、参加への意欲はさまざまなのですが、参加後の感想は皆さん、とても肯定的です。裁判員制度の問題点として、ほとんどの方が守秘義務について、厳しすぎる、範囲が不明瞭といったことを挙げているのも共通しています。

 そのあたり、あまりにも似通った意見ばかりなので、天の邪鬼なわたしは裁判員制度に否定的な意見も聞いてみたいものだと思ってしまいました。

 もっとも、裁判員候補者に選ばれてもその3分の2が辞退するなど裁判員を忌避する傾向がやや強いなか、裁判員を務めたのはもちろん、裁判後も経験者の交流会に出席するような方(このインタビューに応じた方は皆そうだとか)なら、ある程度共通した意見になるのは当然かもしれません。

 交流会というものが存在するくらいなので、裁判制度とか言論の自由とかとはまた別に、人は特別な体験を語りたいし、同じ体験をした人とそれを共有したいものなのだな、とか思ったり。

 内容はとても有用だと思います。これまでに12万人以上が選任され裁判に参加したとありますが、対象者全体からすればひとにぎりで、実際に選任される可能性はさほど高くなさそう。でも、された場合、とても参考になると思いますし、されないにしても読めば制度への理解が深まります。

 開始当初、「唐突に新たな義務が増えた」という印象から、わたしは裁判員制度についてはあまり好感を持っていませんでした。しかし、この本での経験者の感想含め、制度への評価が高いことを考えれば、理解が浅かったなと反省しています。

 もし、選任されることがあれば、支障がない限り、辞退せず、受けようと思います。