
『日本の財政』(佐藤主光:著 中央公論新社)、読了。
主要先進国の中でも最悪レベルの日本の財政。その現状を改めて確認し、問題点を指摘しつつ、対策を提案するもの。著者は経済学の研究者。
税制や経済指標の説明ではやはり数字が出てきますので「誰にでもすぐに理解できる!」とはいかないでしょうが、堅実ではあっても専門的過ぎない文章でこの分野の書籍としては読みやすい方だと思います。ただし、指摘している問題点とその対策はかなり厳しいもので、そちらは受け入れやすいものではありません。
わたしが理解できる範囲では、妥当な意見なのではと思います。わたしとしても、著者の意見に喜んで賛成しているわけではないのですが。
「財政赤字は問題ない」と考える人も少なくないようですが、そちらの意見はどうも、わたしには腑に落ちません。また、今はだいじょうぶだとしても、限界はどこだと考えているのでしょう? 無限に財政支出が拡大しても問題ないとは思えないのですが。
MMT( Modern Monetary Theory・現代貨幣理論)がそうした意見の根拠になっていることも多いようで、確かに以前読んだMMTの一般向けの解説書『財政赤字の神話』では「単なる財政赤字は過剰支出ではない」としていました。ただし、「財政の健全性はインフレが適正な状態にあるかどうかで判断されるべき」ともしていました。そして、今の日本は明らかにインフレへ向かっているので・・・。
今日の本 − 『財政赤字の神話』
著者は政府の税制調査会の委員も務めている人物ですので、かえって「政府の代弁者になっているのでは?」と不審に思われてしまうのかもしれませんが、それはそれとしても、財政健全化を唱える論者がどのような根拠でそう主張しているのか、を知ることは有用だと思います。