『謎の平安前期』(榎村寛之:著 中央公論新社)、読了。
一般向けの歴史書の題に「平安前期」という切り口が使われるのは珍しいと思います。中途半端な気もしますが、平安時代って約400年もあって長いですしね。本書は平安時代の前半と後半では様相が大きく異なることを指摘し、うち前半期の特徴を著者の視点で紹介するというもの。この時代の通史的な本ではない(平安前期の歴史の流れについては、序章までの30ページほどでサラッと説明)ので、注意。
本書も律令と実態の乖離という点に注目していて、その矛盾を国情にあった統治体制への修正で対応しようとしていた時代として、この平安前期をとらえているようです。
著者は伊勢の斎宮関係の本をいくつも出している研究者で、それもあってか、官女、内親王、斎宮といった女性たちについて紙幅を割いていて、このあたり、なかなか一般向けでは解説が少ないところなので興味深いです。また、文徳天皇のような非常に印象の薄い天皇についても1章割り当てているとか、なかなかユニーク。反面、ちょっと踏み込みすぎた解釈をしているような感じもあって、時々首をかしげたりもしましたが。
今日の本 − 『古代日本の官僚』