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開店休業の記

今日の本

就職氷河期世代

 『就職氷河期世代』(近藤絢子:著 中央公論新社)、読了。

 就職氷河期世代。あまり説明の要もないと思いますが、バブル崩壊後続いた不景気時代、求人がそれ以前と比較して著しく悪化したとされる時代に社会に出なければならなかった世代を指します。

 本書は就職氷河期世代を1993〜2004年に学校を卒業した人たちと定義した上で、各種統計データに基づき、この世代の就業状況、収入格差、未婚化・少子化の実態、男女格差等を分析していきます。

 著者は労働経済学の研究者。著者自身、就職氷河期世代です。景気の悪い時代に育ち、なぜそうなったのか、理由が知りたいと考えて、経済学の道に進んだそう。

 各章、とにかくデータの分析が中心です。新書というより〇〇白書のよう。読みやすいとは言いにくいです。一方、そういう感想を見越してか、各章の最後に短く、分析のまとめをつけてくれたのは、理解する上でとてもありがたいです。また、余計な「読み物」的な文章がないことで、簡潔な内容になっており、参考資料として使うのには向いているかもしれません。

 本書の分析結果で、おそらく最も議論を呼びそうなのは、就職氷河期世代で急速に未婚化・少子化が進行したわけではなく、それ以前の世代からその傾向は継続してきたものであり、むしろ氷河期世代で下げ止まった、としているところでしょう。ここはしっかりおぼえておかなくては、と思いました。

 また、残念ながら経済的自立が困難なまま、高齢期を迎えてしまう層が一定数出ることは避けがたいとし、それを前提に対策を考える時期に来ているという提言も、厳しいですがそのとおりかもしれません。

 補論に使用した各種統計が挙げられていますが、そのなかの一つ、賃金構造基本統計調査、事務職の会社員時代に記入を担当していたことを思い出しました。