メニュー 蕭寥亭 検索

開店休業の記

今日の本

すてきなモンスター

 『すてきなモンスター』(アルベルト・マンゲル:著 野中邦子:訳 白水社)、読了。

 タイトルが気になって読んでみました。副題が『本のなかで出会った空想の友人たち』。こちらもそそられますね。

 本のなかの、架空の登場人物たちについてのエッセイです。著者はアルゼンチン出身の多分野で活動する作家で、母国の国立大学の図書館長を務めたこともある読書人。読後の印象では、これはおそろしく博覧強記の文人ではないかと。で、そういう古風な形容が似合う人ではないかと感じました。

 取り上げられている登場人物(怪物?)のうち、サタンやドラキュラ、キマイラなどは文字通りモンスターですが、赤ずきんちゃんや眠れる森の美女ってモンスター・・・? 原題が "Fabulous Monsters"(『鏡の国のアリス』からの引用)なので、訳としてはそのまんまなんですけどね。

 怪物・人物を紹介する短い37の章で構成されています。よく知られた作品のキャラクターが多く、素材としては親しみやすいものを取り上げていますが、その造形、物語における役割、そしてそのキャラクターの意味するところを、各数ページながら多様な文献を引用しつつ密度濃く探求しており、よくある物語の登場人物に対する自分の思い入れを延々と語る、といったものからは一線を画す内容です。正直、ついていくのが大変でした。読み切ったものの、理解度は半分以下ではないかと・・・。

 ということで、タイトルの印象とは異なり、読みやすい本ではないと思うのですが、「わかる人間だけわかればいい」という門外漢お断り的難解さとはまた違います。そのためか、読んだことのない物語のキャラクターについての章も、わたしは関心を持って読めました。