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開店休業の記

今日の本

朱子学入門

 『朱子学入門』(垣内景子:著 ミネルヴァ書房)、読了。

 中国・南宋の朱熹を源流とする儒教の学派・朱子学は後に体制と結びついて儒教の主流となり、日本でも江戸時代に事実上幕府公認学派となり、歴史の教科書にもそのことによって載っています(少なくともわたしの世代の教科書では。今でもそうだよね?)。

 思想としても歴史的な役割からも非常に重要な位置にあるはずなんですが、その割にはどういう教えなのかはあまりよく知られていないようですし、わたしもよく知りませんでした。

 そのことにふと気がついて、何か一般向けの解説書でも読んでみようと思ったら、これが意外とないんですな。どうしたことだ?

 朱子学の研究者である本書の著者も、本書出版時点(2015年)で「一般向けのわかりやすい概説書はほとんど見当たらない」と言うお寒い状況の中で、興味を持った人がただでさえ理屈っぽいと言われる朱子学のわかりにくさの前に挫折しないよう、初歩の初歩、「入門のための入門書」として書いたのが本書とのこと。大学の一般教養科目の講義が元になっているそうです。

 そのとおり、著者ができる限り、わかりやすい表現を心がけ、かみ砕いて朱子の思想を伝えようとしていることは感じます。だいぶ苦労されたでしょうね。

 ただ、それでも、どこまで理解できたのやら。この思想の基本的なところもまだおぼつかない感じです。文章としては読めてはいても、実感として腑に落ちるというところまでいってない、というか。もう少しこっちが勉強しないと。

 その一方で、朱子の思想は本来、心の問題を論じるものである、ということは初めて知り、驚きました。ほとんど根拠のない先入観によって、礼の作法の些末なところまでこだわる形式主義のようなものかと勝手に思い込んでいたので。やっぱり読んでみるものです。

 また、朱子学が宋代に盛んであった仏教の対抗思想の側面を持っていたこと、その朱子学のこれまた批判者として登場した王陽明の思想の紹介、日本での朱子学の受容のされ方など、とてもおもしろく、また朱子学について別の本も読んでみようという意欲を持たせてくれる本でした。