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開店休業の記

今日の本

史伝 北条義時

 『史伝 北条義時』(山本 みなみ:著 小学館)、読了。

 鎌倉期の研究者による、武家全国支配の道を開いたとされる鎌倉幕府執権・北条義時の伝記です。出たのが3年前なので、ほぼ最新の研究成果を盛り込んだ内容です。

 読み終わって思うことはまず、エピローグにある著者の言葉への共感です。曰く、「義時の赤裸々な人間としての性格はどうかと問われると、結局、想像の域をでない」とのこと。

 そう、この本自体は、義時の生い立ちから事績、その死、さらには死後の評価まで丹念に追った、中身の濃いものなのに、それでも義時の具体的な人物像を思い浮かべられるようなエピソードはさっぱりないのですね、これが。どうも史料に残っていないらしいです。

 連続する内部闘争をくぐり抜けて鎌倉幕府の指導者となり、討伐対象として朝廷から名指しされた承久の乱にも勝って、幕府の朝廷に対する優位を確立した日本史上において特筆されるべき人物でありながら、なんなんでしょう、この個性の乏しさ。教科書にものっているような歴史上の人物で、ここまで印象の薄い人って他にいないような気がします。

 彼がこの時代の動向を左右する重要な位置にいたことはまちがいないのですが、でも、この人、主体的に動いていた形跡があまり見えないんですよね。受動的、あるいは巻き込まれ型と申しましょうか。

 実は不思議な人でありました。