『「昭和天皇拝謁記」を読む』(古川隆久・茶谷誠一・冨永望・瀬畑源・河西秀哉・舟橋正真・吉見直人:著 岩波書店)、読了。
『昭和天皇拝謁記』は、初代宮内庁長官田島道治が1949年から1953年にかけて昭和天皇に面会した際の対話を、田島自身が記録したものです。公的な場面以外での昭和天皇の発言が詳細に残されており、2019年に公表された際には大きな反響を呼びました。
本書は『昭和天皇拝謁記』公刊にあたって編集者を務めた6人の研究者と『昭和天皇拝謁記』を発掘したフリージャーナリスト1名による、全7巻という大部の『昭和天皇拝謁記』の読みどころ・ポイント解説、というものです。
戦後史の第一級史料と高い評価を受ける『昭和天皇拝謁記』については、わたしも関心はあったものの、内容・分量ともに素人にはなかなか手が出せるようなものでありませんので、こうした一般向け解説本が出るのはありがたいです。
公式発言からでは読み取れない、昭和天皇のアジア・太平洋戦争についての認識や象徴天皇という立場のとらえ方がうかがえ、確かに重要史料であることが察せられます。
敗戦により天皇は、万世一系の統治者・元首・大元帥から国政には関与しない象徴へと立場が激変したわけですが、本人の心中ではなかなか切り替えができていなかったようです。それはやはり良いことではないわけで、記録を残した田島道治も度々諫言に及んでいます。一方で、人の考え方、特にそれなりの年齢に達した人間がそう易々と考え方を変えられるものではない、というのにはなんだか納得できちゃったりします。
また、昭和天皇が妻子を非常に大事にし、時に甘すぎるくらいだったというのは意外でした。これに対して弟たちとの関係は円満とは言えず、『皇后考』でも指摘されていましたが、母である貞明皇后ともうまくいっていないことが垣間見えるそう。このへんは、なんといいますか、えーと・・・、どこの家もいろいろあるのね・・・。