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開店休業の記

今日の本

フィッシュ・オン

 『フィッシュ・オン』(開高健:著 秋元啓一:写真 新潮社)、読了。

 わたしは著者の小説はほとんど読んでいない(『輝ける闇』、読んだかな?)のですが、著者のエッセイ・紀行・ルポルタージュは大好きで、『ベトナム戦記』、『ずばり東京』、そして『オーパ!』シリーズなどを読んでいます。

 本作はアラスカをふりだしに、日本を含め10カ国、地球をほぼ半周した釣り紀行。

 各地の写真も作品の重要な要素となっており、著者の代表作の一つ『オーパ!』シリーズの先駆となる内容です。著者によれば「釣師はホラを吹く癖がある」ので、「編集部は証人としてカメラマン」をつけることにしたのだとか。写真の秋元啓一はベトナム戦争取材でも著者と組んでいます。

 この旅では、前記の通り10カ国もまわっており、また本書では割愛されているのですが、ビアフラ戦争、中東戦争の取材も兼ねており、そのためか『オーパ!』と比較するとまとまりがない感じはしますが、それでも十分楽しいです。

 釣りのこと以上に、登場する世界各国さまざまな立場の人たちの、それぞれの生き方が興味深いです。

 著者の文章は、かつての(戦前生まれあたりまでの)小説家らしい、一種の気取りがあると感じるのですが、それがキザではなく、ユーモアになっているところがいいなと思っています。