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開店休業の記

今日の本

サイバースペースの地政学

 『サイバースペースの地政学』(小宮山功一朗・小泉悠:著 早川書房)、読了。

 仮想的な空間とばかり思われているサイバースペース。たわいないチャットのやりとり、今や当たり前になったネット上の商取引から軍事上の通信まで、そこで中心となる様々な情報のやりとりはしかし、物理的な巨大インフラによって支えられている。その現場にサイバーセキュリティと軍事の専門家二人が赴いて観察する、というものです。

 題はなかなか壮大で企画の着眼点もよいと思うのですが、実際の本は薄めの新書なので、観察したポイントがかなり限られており、看板倒れの感、無きにしも非ず。新書で『新しい世界の資源地図』みたいなのを、というのは無茶にしても、だいぶ駆け足の考察になっており、もう少し幅、厚みが欲しいところ。また、「あえて全体像ではなく一部分に着目する」という方針は理解できるものの、結果、話題がバラバラと提供されている感じで、ややまとまりを欠いており、読後感も薄らぼんやりとしております。

 興味深い点も少なくないんですが、それが点のまま拡散してしまっているというか。惜しい。