『完本マタギ』(田中康弘:著 山と溪谷社)、読了。
「完本」とありますが、2009年の『マタギ』と2013年の『マタギとは山の恵みをいただく者なり』という、著者の別々の本に加筆・訂正を加えて再編集し1冊にまとめたものです。
どちらも秋田県北部・阿仁を取材したノンフィクションで、前者は地元の猟師・マタギに同行してその狩猟の様子を記録したもの、後者は阿仁の伝統食を紹介するものです。十数年前の原著発表時点ですでに消えつつあった、北の山里の暮らしと独特な文化を今に伝えています。
読み始めてから気がついたのですが、著者は『山怪』を書いた人でした。
今日の本 - 『山怪』
文章がなんというか、肩に力が入りすぎた感じで、内容そのものは興味深いのにどうも読みにくく、「あれぇ、こんな文章、書く人だっけ?」と怪訝な思いでした。「おわりに」にたどり着くと、著者自身が「文庫化するにあたり何度も原稿を読み直したが、たびたび落ち込んだ」と反省しており、どうやらわたしの印象は見当違いでもなかったよう。
『マタギとは山の恵みをいただく者なり』の結びの部分に、今後10年ほどで阿仁では集団による熊猟ができなくなるのでは、という懸念が記されているのですが、近年秋田では熊による人身被害が目立って増えている様子。懸念が現実のものになりつつあるのが増加の要因の一つなのではないだろうか、とも考えてしまいます。