"Rod Stewart and the changing Faces"( John Pidgeon:著 Rock's Backpages )、読了。
洋書です。著者はイギリスのジャーナリストです。原著は1976年に出たもので、2011年に電子版で復刻されました。わたしが読んだのは電子版。
原著発表時点(つまり Faces 解散直後)までの Small Faces 〜 Faces のメンバー、そしてバンドとしての経歴を簡潔にまとめたものです。加えて、著者自身がローディーとして Faces のツアーに参加した体験記が含まれています。
すでに Faces の評伝できわめて詳細な労作 "Had Me a Real Good Time: The Faces" を読んでいましたので、本書の存在を知っていても、あまり読む気はしませんでした。150ページ程度と比較的薄い本で、情報量で及ばないだろうと思いましたし。
まあ、一応、念のため目を通しとくか、ぐらいの気分で手を出したのですが、いやいや、これは読むべき本でした! 危ない、危ない。"Had Me a Real Good Time: The Faces" や "Anymore for Anymore: The RONNIE LANE Story" にも出てこない話があるし、時代が近いので、Faces 解散から数十年後に書かれたこの二書とは異なる記述の生々しさがあります。ローディー体験記も短いとはいえ、当時のロックバンドのツアーの様子やローディーの仕事内容を知ることができる貴重なレポートです。なお、このツアー中に風邪をひいていしまった著者は Ronnie Lane に薬をもらったそう(笑)。
Rod は当時「オレは幸運だと思う。たいてい、何でも歌えるってわかっているんだ。あえて言わせてもらうと、本当に、文字通り、ほとんど何でもね。これまで挑戦して歌えなかったのはほんの数曲だけだ。バラードを本当に上手く歌えるひとにぎりの歌い手の一人であって、ロックンロールも同じくらい上手く歌えるんだから、恵まれてるよ。」と豪語していたそうです。
で、上手く歌えなかった例外が、Ronnie Lane の曲ではなかったかと。"Ooh La La" のころの話はやっぱり辛い・・・。
Faces 解散後に Rod が出した "A Night On The Town" のジャケット裏の写真について、著者は「ブレザーにカンカン帽、片手にシャンパン、そしてもったいぶって人を見下すような表情。笑顔もなく、もう若き野郎どもの一員というふりもしない、新しいロッドがそこにいた。富を身にまとっていた。」と厳しい評価をしています。この評価からやはり三十数年後に出た自伝を読むと、Rod 自身、このころのことは冗談めかしながらも後悔しているみたいだしなぁ・・・、ああ。
Faces 脱退後の Ronnie Lane の動向についても、短い1章を設けてふれています。Passing Show 失敗を、Ronnie が運と経験のせいにしていることについては、こちらも著者は批判的ですが、Slim Chance の作品については高く評価しています。
そして、悲しむべきことに原著が出る前に経済的事情(当時も評価する人はいたのだから、もう少し売れていれば!)により Slim Chance は解散してしまっていたのですが、メンバーの Steve Simpson の言葉にはわずかに救われます。
「あのころ、ロニーと一緒に仕事をするのは最高だった。あんな男と働いたことはこれまでなかった。彼は間違いなく唯一無二の存在さ。そして、あのバンドは狂気のバンドだった。たまに失敗ギグをやらかすこともあったけど、それを別にすれば、それまでの人生で他の何よりもあのバンドを楽しんでいた。」