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開店休業の記

今日の本

国鉄

 『国鉄』(石井幸孝:著 中央公論新社)、読了。

 国鉄、と聞いてもピンとこない人が今では多くなったのではないかと思います。国鉄が分割民営化によりJR各社へと変わったのが1987年。もう37年前ですか。さすがにわたしもJRを国鉄と言い間違えることはなくなりました(JR発足からしばらくは、皆よく言い間違えていました)。

 政府の鉄道現業部門が、公共企業体という特殊な組織の国鉄(正式には日本国有鉄道)になったのが、1949年。そこから分割民営化に至るまでの38年の国鉄の姿を追ったものです。

 著者は1955年に技術職として国鉄に入社、車両開発等を担当した後、経営部門に転じ、分割民営化後はJR九州の社長を務めています。これ以前にも鉄道関係の本をいくつも出しているだけに、文章は読みやすいものです。また、経歴からついつい先入観をもってしまいそうですが、偉い人の自慢話ばかり、というものではありません。

 新書としては分厚い、380ページ超。著者が何度も言うように、巨大組織であった国鉄。それを描くにはこれだけの分量が必要だったということでしょう。冗長な書きっぷりで長くなったというようなものではありません。むしろ、国鉄の全体像をつかむには、これでも足りないくらいでしょうか。

 公共「企業」体とはいいながら、予算や運賃改定は国会承認が必要と自主裁量は著しく制限され、にもかかわらず効率経営と公共奉仕を同時に求められる矛盾。組織も省時代を引きづり、お役所体質も分割民営化まで変わらず。

 今となっては理解しにくい労働組合の問題や、著者が手がけたディーゼル車開発など、他にも興味深い話がたくさんありました。技術畑出身でJR九州の社長だった人が、導入断念に至った西九州新幹線のフリーゲージトレインについて、非常に批判的であるのもおもしろいところ。

 最後に、未来の日本の鉄道の在り方として、新幹線物流を提唱しているのも、実現可能性やほんとうに有意義かどうかは別として興味深いです。意地悪な見方をすれば、未来の話でリニアについてほんのちょっぴりしか言及していないのは、貨物とは相性がよくなさそうだから?

 とても読み応えのある本でした。