『人類の起源』(篠田謙一:著 中央公論新社)、読了。
人類の先祖が最も近縁であるチンパンジーの先祖と分岐したのが推定700万年前。様々な種が登場しては消え、現生人類直系の先祖であるホモ・サピエンスが現れたのが推定30〜20万年前。揺籃の地・アフリカを出たのが推定6万年前。そこから数万年かけて世界各地に広がったホモ・サピエンス≒現生人類。その足跡をDNA解析を駆使して追う人類学の成果を解説するものです。
著者は分子人類学の研究者。
サイエンスライターではなく、研究者が書いたものらしく、記述は丹念で、みっちり内容がつまっている感じです。読みにくいわけではないのですが、一般向けの新書本としては密度が濃く、ついていくのはけっこう大変でした。
この分野は長足の進歩を遂げており、とにかく興味深い話がいっぱい。著者が日本の研究者ということもあって、日本列島の状況にもかなり紙幅を割いています。
わたしが20代のごろまでの人類学では、ネアンデルタール人は現生人類とは別系統で交雑していないということになっていたと思いますし、デニソワ人なんて聞いたことさえなかったです。
本筋からは少し遠ざかるため、コラムとして取り上げられている「ヴァンパイアのDNA」もおもしろい。
「おわりに」で著者が述べているところでは、本書は2021年時点できる限りの最新情報を盛り込んだものですが、日進月歩で研究が進んでいるそうで、今後も定説をひっくり返すような分析結果が出てくるかもしれません。本書には大いに啓発を受けましたが、これで油断せず、今後も注目していきたいです。