『イヌはなぜ愛してくれるのか』(クライブ・ウィン:著 梅田智世:訳 早川書房)、読了。
原題は "DOG IS LOVE" ! すごい題だ・・・。
著者はれっきとした学者です。犬の心理研究で著名だそう。研究者の著書でこの題は、ちょっと、だいじょうぶかなと思ってしまいます。むしろ、一般人なら苦笑いくらいで許されるかもしれないけどさあ。文章も、犬への愛が昂じて科学者としての客観的な眼が曇ってしまっていないかと心配になるくらい。著者自身もその危険性は感じているようではありますが(笑)。
犬と人間の、特別とも思える結びつきはどうして生じたのか? 犬は人間をどう思っているのか? 人間を愛しているのなら、どうしてそうなったのか?
そうした疑問に対する答えを求める、著者を含めた多くの研究者の成果を紹介するポピュラーサイエンスです。楽しく読めました。
いくつか印象に残った点を挙げると、まず、イヌが最も近縁であるオオカミから進化する過程で最近起きた遺伝子上の変化が重要だとしたところ。クローン技術によって生まれ、遺伝子は同一のはずの犬でも性格は異なるということ。ピットブルという名前は一つの犬種を表すものではなく、ある体型的な特徴を持つ犬を指す大ざっぱなくくりでしかないというのは意外でした。なお、著者は、人間が狩猟の助手役にするためにオオカミを飼い始めたのがイヌの起源、という説には否定的です。
読みやすい文章でもあり、犬と科学の両方が好きな方にお薦めできるかと。