"Anymore for Anymore: The RONNIE LANE Story"( Caroline & David Stafford:著 Omnibus Press )、読了。
昨2023年秋に出た Ronnie Lane の伝記です。
彼の誕生から死までを時系列に沿って記述したオーソドックスな形式で、ところどころで著者の癖のあるひねった表現(イギリスの人ならすぐ理解できるかもしれませんが、わたしは時々悩みました)が挟み込まれるところを除けば、よくまとまった過不足のない内容と思います。現在、波乱に満ちた Ronnie Lane の生涯をたどろうと思うなら(そして英語の壁を乗り越えようという意欲があるなら)まずは本書、ということになるでしょう。
先行して2017年に出た "Can You Show Me A Dream? The Ronnie Lane Story" は限定販売で今は入手困難になっている上に、関係者のインタビュー等の口述された記録のみで構成されており、予備知識がないと内容が理解しにくいものでした。
"Had Me a Real Good Time: The Faces" も Ronnie の歩みをほぼ網羅し、Faces 時代に限っていえば本書よりも詳しいくらいですが、あくまで Faces の評伝なので Ronnie 個人に焦点をあてるなら物足りない面があります。
特に本書で貴重なのは、他の2書やドキュメンタリー映画 "The Passing Show: The Life and Music of Ronnie Lane" ではほとんどなかった、Ronnie の2番めの妻・Kate や 子どもたちの証言が含まれていることです。それと1980年代、渡米後の Ronnie を苦境に追い込んだ ARMS of America の問題にも触れられており、その時何が起きていたのか、知る手がかりになります。
体が小さいいじめられっ子で勉強もできなかった少年が音楽の道に進み、まだ十代のうちに Small Faces でデビュー。瞬く間に成功を収めるけれど、フロントマンの突然の脱退でバンド崩壊。雌伏を強いられるも、Faces で再び大成功。一見、華やかなロックスター生活を送っていたものの、様々な不満が蓄積していき、今度は自らバンドを脱退。望む音楽を実現するべく率いた Slim Chance 時代は素晴らしい作品を連発しても、商業的には鳴かず飛ばず。そして、難病発覚。彼の人柄を愛する仲間の力でチャリティイベントは大成功。しかし、その収益の使途を巡って訴訟沙汰に。闘病は20年以上に及び、車椅子生活を余儀なくされても、音楽活動への意欲は続き・・・。
こんな人生があるものなのか、何という人生だろう、と深く思わずにはいられません。