メニュー 蕭寥亭 検索

開店休業の記

今日の本

土の声を

 『土の声を』(信濃毎日新聞社編集局:著 岩波書店)、読了。

 建設中のリニア中央新幹線を、様々な問題をかかえながら工事が進んでいる経由地・長野県の立場から考える、というノンフィクション。元は地方紙の連載記事で、地方紙ならでは、という内容です。

 リニア中央新幹線というと、建設・運営主体はJR東海なのですが、全国新幹線鉄道整備法で計画された路線であり、巨額の資金が政府より貸与され、用地取得の交渉は自治体が担当でと、確かに「国策民営」という形容が当てはまります。そして、JR東海が「中央新幹線がもたらす新たな価値」として、まず「東京~名古屋~大阪の日本の大動脈輸送を二重系化し、さらには、三大都市圏が1つの巨大都市圏となる」という点を筆頭にあげていることからもわかるとおり、三大都市圏以外の経由地についてはオマケ扱い、という印象がありました。

 それは本書を読んだ後でも変わりませんでした。むしろ、その印象が濃くなったというか。「大都市圏」のための「国策」的な「新たな価値」に、オマケ扱いの地方が振り回されているという。もちろん、負の側面だけでなく、期待されるところも少なからずあるわけですが。

 電力消費が莫大ということなどから、わたしはもともとリニアには懐疑的だったのですが、大量に発生する工事残土の問題については、本書を読むまで全く気がついていませんでしたし、建設のために移転させられる人たちの心情までは考えが及んでいませんでした。やはり「都市」の目で、「他人事」として見ていたからでしょう。苦いものを感じます。