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開店休業の記

今日の本

ふるさとって呼んでもいいですか

 『ふるさとって呼んでもいいですか』(ナディ:著 大月書店)、読了。

 読書メーターのコミュニティでの、オススメ本です。

 6歳の時に、イランから両親に連れられて日本にやってきて、以来、日本で暮らし、成長した女性のお話です。

 対象年齢等の記載はありませんが、やさしい文章で、漢字はふりがな入り。小学生高学年から読めそうです。

 去年観た映画『マイスモールランド』やその後で読んだ『ぼくたちクルド人』を思い出しながら、読んでいました。

 著者には幸い在留特別許可がおりていて、日本に定住して暮らし続けることが可能なのだそうで、読んでいてホッとしました。

 外国人労働者の問題について、少し触れている部分がありますが、工場地帯で育った身としては「まったくその通り」と思います。外に買い物にでもでかければ、必ず少なくない数の、外国出身とおぼしき人たちとすれ違うようなところで暮らしてます。おそらく不法入国の人もいるでしょう。問題も発生しています。そうしたことは確かにありがたくありません。

 とはいえ、そうした人たちをすべて追い返してしまえば、地域の産業が成り立たなくなってしまうだろう、ということも強く感じています。それだけ多いのです。それが「現場の状況」です。

 今、近くで住宅の解体工事、やっているのですが、働いているのはやはり外国出身とおぼしき人ばかり。

 「不法」といったところで、その法が時代にそぐわなくなっているんじゃね、と思わざる得ません。

 一方、著者が日本に対して「遠慮」して生きてきたことが、内容の端々から、そして『ふるさとって呼んでもいいですか』という書名からも感じられて、なんだか傷ましい。

 ただ(急いで付け加えておきますが)、そうした「問題」だけを語る本ではありません。むしろ、それとは別に、幼い子どもの立場から見た異文化体験という、非常に興味深い内容がたくさん含まれています。その視点から、日本はどんなふうに見えているのか、知ることができる点でもおもしろい本でした。